前回「死の接吻」が記述トリックであると書いたが、そう言えばロバート・ブロックの「サイコ」がそうだね。多重人格(三つ)を同時に実在する三人のように描いている。評判の高い本だが、私は感心しない。
記述トリックの最大の危機は最後の謎解きの時の説明の仕方に現われるが、うまく処理しているケースは絶無ではないか。
記述トリックで有名なものは
クリスティのアクロイド殺し、レヴィンの死の接吻それにブロックのサイコだろう。このうちで世間の書評屋の通説とことなり、私がややましと思うのはアクロイド殺しくらいのものだ。
びっくりする(しない)回数、なあんだという回数が少ないほどマシなわけだが、その点アクロイドはシンプルでいい。