まこの時間

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『弓道教本第一巻』と、『日本アルプス縦断記』

2024-12-10 | 弓道
仕事の関係で、とんでもない古書に出会うことがある。
今回、大正6年7月23日発行の『日本アルプス縦断記』

その『日本アルプス縦断記』を、手に取って、著者を見て興奮した。
一戸直蔵 河東碧梧桐 長谷川如是閑

児童文学者、勝尾欣也氏の『山へ登ろう。いろんな山へ ー 子どもたちへの深田久弥のメッセージ』(桂書房) 2012 の中に紹介されていた深田久弥の書いた『山の本』という文章が、紹介されていた。
久弥は大正7年ころ、生涯忘れられない貴重な出会いがあった。
「僕が始めて山の本を買ったのは、中学生の時で、『日本アルプス縦断記』田舎の町の本屋でこの本を買った時の喜びは、今も忘れられない。日本アルプスを大勢の人夫を率いてテントを張りながら踏破するという記事は、田舎の中学生にはまるで夢のような手の届かない話であったが、興奮した。」と書かれている。

さて、私の興奮は『弓道教本』と、『日本アルプス縦断記』のつながりだ。

我が家には『弓道教本第一巻』が、4冊ある。
殿と私が、若いころインデックスをつけて勉強した古い教本。
その頃は、昇段審査の学科問題は、どんな問題が出るか分からず、当然教本を見ることはできず、とにかく読みまくって勉強しなくてはならなかった。
錬士の審査では面接もあるし、何回も読んでいるうちに、インデックスがすり減ってなくなっているのが私の教本だ。
今は、コロナ禍もあって、前もって問題が提示され、受審者は何を見て書いても良いので、殆ど完璧な回答を引き出せる・・はずである。
さて、初版から何回も改訂され、改訂増補が出され、2冊目を買わなくては内容が微妙に変わっていたら、これをもとに指導するので必要である。
ところが、最近表紙の色が変わって、またまた買い替えた。
正誤表や、写真の間違いシールを貼るというおまけがついた。
それでも50年来変わらないのは序論である。
「日本の弓の伝統とその性格」というところで、「日本の弓の尊崇性」に、弓体の美として、長谷川如是閑氏の『礼の美』からの引用文が載っている。
ずっと謎だった。この人は誰?そして、この文章がずっと載っているということは、この文章以上に的確に述べている文章がないと言える。
その長谷川如是閑が、アルプス縦断!おまけに俳人、河東碧梧桐もいっしょに。



さて、健脚揃いの3人とは何者なのか?
一戸直蔵は青森出身で東大星学科卒の理学博士、アメリカの天文台で3年間星の観測に従事し、東大講師を経て大正4年からは「現代之科学」誌主宰を務める38歳。
碧梧桐は松山出身で正岡子規に師事し、子規没後は自由な俳句表現を主唱し、当時は「日本及日本人」誌の俳句選者で登山好きの42歳。
如是閑は東京生まれの浅草育ち、イギリス法学を学んだジャーナリストで、当時は大阪朝日新聞の社会部長をつとめる40歳だった。


登山の話だけでも、弓道教本だけの話でも如是閑についてスルーしていたかもしれない。
読んでみよう。あんなにも美しく弓を表現した人の山を。
きっと、深田久弥もわくわくしたに違いない。
しかし、旧漢字が並んでいる。わくわくの前に「うーん」とうなる箇所が。










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