パッド(生理用ナプキン)を自作の機械で生産した、
南インドに実在する男性の真面目な話である。
最初にタイトルを見て「バットマン」のパロディかと思い、
観ていなかったのだが日本でも上映されるほどになり・・・
反省しつつ・・・公開から1年以上経った今、観た。ごめんなさい。
日本語のサブタイトルは「5億人の女性を救った男」である。
日本でも女性の生理の話を男性が語る事もないし、
家族間であっても女性が男性と話題にする事はない。
最近、ネパールで生理中の女性を小屋に隔離していたところ、
女性が暖を取るために火を焚いて焼死してしまったニュースもあった。
この映画でも描かれているように・・・・
インドでも同様に生理中の女性は穢れていると言う理由で、
母屋に入れず家族とも隔離する習慣がある。
最近の都市部では見かけないが田舎の農村部では続いている。
劇中で主人公が奥さんを愛するが為に自作のパッドを作り、
奥さんや家族の女性達は死ぬほど恥ずかしい思いをし、
村のみんなからも狂人扱いされると言う事も、
全く大げさな描写ではない。
もし近所のオジサンが夜中にパッドを持って訪ねてきたら、
変態だと思って怖がるに決まっている。
写真中央が本作のモデルとなったタミル・ナードゥ州の
アルナーチャラム・ムルガナンタム氏で、
もっと過去の人かと思ったら1962年生まれ。
2014年TIME誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれ、
2016年にインド政府から勲章を授与されている。
<ストーリー>
舞台は2001年のマディア・プラデッシュ州マへーシュワル。
ラクシュミカント(アクシェイ・クマール)と
ガヤトリ(ラーディカー・アープテー)の結婚式のシーンから始まる。
溶接の仕事をしている彼は奥さんをとても愛しており、
玉ねぎを刻んで涙する奥さんの為にカッティングマシンを作ったり、
自転車に二人乗りするために椅子を取り付けたりする。
ラクシュミは奥さんが生理中になると母屋に入れてもらえず、
隔離されてる昔からの習慣に違和感を唱える。
そして汚い布を繰り返し使用している事を知り、
恥ずかしさをこらえて薬局に行ってパッドを買うが、
55Rs(2001年当時の価格で約140円)もした。
友人から15Rs借りて買って帰ったにもかかわらず、
奥さんはそんな高価な物は使えないから返して来てと言う。
当時チャイが1杯2Rs程度だったし、
舞台となった辺りはかなりな田舎であるので、
55Rsはかなり高いと思われる。
とは言え薬局に返品を断られたラクシュミはそのまま仕事場に行く。
そこで仲間が腕を切ってしまったためラクシュミは傷にパッドをあてがい、
町医者に連れて行く。医者はその処置に感心し、そもそもパッドは、
フランスで兵士の傷を覆う為に作られたと言う話と、
インド女性が不潔な布を使用しているがために病気になったり、
命を落としてしまう事もあると言う話をする。
それを聞いたラクシュミは自分でパッドを作ろうと思い立ち、
清潔な布と綿、接着剤を無料で手に入れ河原で試作品を作る。
奥さんに使ってもらうが全くダメだった。
ラクシュミは改良を重ねるが全くもって不評だった。
そして奥さんから恥ずかしいからパッド作りを止めるように言われる。
そんな事でくじけるラクシュミではなかったが、
奥さんに使用を断られ、家族にも知られ恥を知れと言われ、
村人からも狂人だと言われ村を追われる。
でも彼は諦めなかった。
州都インドールで大学教授の家に住み込みの仕事を得た彼は、
教授とその息子の協力もありパッド製造機を自作する事にする。
金貸しから金を借り機械は完成し、1個2Rsの試作品もできた。
偶然、町にタブラの演奏に来ていたパリー(ソーナム・カプール)に、
試作品を使ってもらう事ができ、その結果、
試作品が市販されている既製品と遜色がない事に歓喜する。
パリーはパッドが自作品である事を知り、
父親の勧めでデリーのIT大学で行われる発明コンテストに出品させる。
ラクシュミのパッド製造機は大統領賞を受賞した(賞金20万Rs)。
受賞のニュースを新聞で知った村人は喜んで彼を迎えるが、
受賞作品がパッド製造機だと知ると掌を返すのだった。
女性の生理は忌み嫌われ、口にするのもタブーである。
また当時、インドではパッドの使用率は、たった12%だった。
パリーはパッドを持って村を回り女性達に製品を売り、
製品の良さと自分たちで作れる事を説明した。
その甲斐あって周辺の村の女性達も参加して、
機械とパッドはどんどん売れていった。こうして、
無力だった女性達が職を持ち、収入を得る事ができて行った。
ある日、国連から電話がありラクシュミは、
パリーと一緒にニューヨークに招待される。
そこで大衆を前に自分のつたない英語で熱弁をふるう。
ついにラクシュミはインド全土で有名人になった。
ラクシュミとパリーの間に愛が芽生えていたが、
パリーは共に苦労をした仲間である事を強調し、
ラクシュミを家族の待つ村に送り返す。
(ここはフィクションであるとムルガナンタム氏本人は言い切る。)
ようやく彼を認めざるを得なくなった家族と村人たちは、
大歓迎で彼を迎えるのであった。
10年くらい前はコンテックス社製が主流で、
それから都市ではP&G社のウイスパーが出始め、
最近はユニチャーム社の製品も販売されてる。
しかしながら、田舎では未だに汚い布切れを使いまわしており、
家族とは隔離されている現実がある。
トイレの話もそうだが、インドでは映画の影響は大きい。
映画館での上映の前にたくさんのCMが流れるが、
煙草の禁止と同じ位、パッドの購入のCMが目につく。
(ちなみにパッドのCMはアクシャイ・クマールと綿屋のオヤジ。)
現在、ムルガナンタム氏が開発したパッド製造機は、
5200台以上稼働しており、30万人の女性の人生が変わったと言う。
小さな事からコツコツと、素晴らしい人がいるものだ。
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