2015年発行の大沢在昌の小説。
大沢作品の主人公は新宿鮫の鮫島警部のような
カッコいい人も多いのであるが・・・
ときおり、ええっと言うようなカッコ悪い人も登場する。
今作品の主人公は元刑事で40歳の甲賀悟朗である。
入れ上げた女性のパトロンがヤクザのフロントであったため、
汚職とまではいかないがクビになったのである。
仕事もなく、当然お金もないから女性もいない。
そんな年末、ゴローは事件に巻き込まれて行く。
そんなある日、ゴローの元に警察から電話がかかって来る。
「あなたの奥さんを保護しました。」
お金のないゴローは、見ず知らずの中国人女性と
偽装結婚をして50万円を手に入れていた。
元刑事ともある男が、偽装結婚とは驚くのだが、
腐っても鯛・・・では、ないようで。
通常であれば中国人(外国人?)と結婚する場合は、
当然、当人同士は会う必要があり、戸籍などの書類を持って、
中国(相手の国)に行き手続きをしなければならない。
しかしゴローの場合、間に入った女性(仲介者)が、
書類さえ揃えれば中国に行く必要はない。と言ったため、
ゴローは書類を揃えただけで、中国には行ってないし、
女性にも会っていなかった。その名前しか知らない
中国人女性が保護されたと言うのである。
女性が所持していた外国人登録証にゴローの名前が夫として
記載されていたためにゴローに電話がかかって来たのだ。
しかたなく病院に行ったゴローは、
女性は記憶を失っている事をしらされる。
成り行きとは言え、戸籍上の夫婦であるので、
ゴローは女性(妻)を自宅に連れて帰る。
ゴローは仲介の女性に連絡を取るが、
妻は何者かに追われていた。
妻は誰なのか? どういういきさつでゴローに
偽装結婚を持ち掛けたのか?
元刑事だけの経験とカンを頼りにゴローは、
追手とのバトルに巻き込まれて行く。
ゴローの情けなさとカッコ悪さが、
この男、元刑事なの??? と思わせるが、
刑事がカッコいいのはドラマや映画だからだろう。
事件の謎を解いていくうちに記憶を失った妻も
少しづつ記憶を取り戻し、戸籍上(偽装結婚)の夫婦も
少しづつ打ち解けて行くところがほのぼのとしていた。