大沢在昌の1992年の作品。
主人公は長生(ながお)太郎と言う若いサラリーマンである。
ちょっと前に読んだ坂田勇吉シリーズは、
ササヤ食品のサラリーマンだった。
今回の長生は製薬会社の営業マンである。
適当に読んでいるので、たたたま続いたのであるが。
ある日、太郎は得意先からの帰り道にひき逃げに遭う。
病院に運ばれるが運悪く死んでしまう。
あららっ、主人公が死んだら終わっちゃうじゃない。
ところが太郎の意識は生きていた。
身体は死んでいるのだが。
え、「天使の牙」に似てるような・・・。
脳死で身体に傷がない女性と、身体は死んでいるが
脳が生きている女性を1人の女性として生き返らせる。
こちらは1995年の作品で、その作品の布石と
なったのが今回の作品である。
事故から2週間後に太郎が目覚めた時、
太郎の身体は死んでいた。脈もなく、
心臓も動いておらず、体温も低く、痛みも感じず、
真に死体であった。死んでいるので食事も必要なく、
排泄も睡眠も休息も不要だった。
勤務している会社で開発した薬を飲む事で、
身体の腐敗を防ぐのだ。
ある日、開発した博士が失踪してしまい、
それが太郎の飲んでいる新薬が原因だと言う事になる。
太郎も狙われるかもしれない。
太郎は日常に帰っていく。
しかし死んでいる人間なので目立てない。
化粧をしコンタクトレンズをはめ、日にも当たらず、
気温の低い時だけ外出する。薬は飲み続けなくてはならない。
と、ここから太郎は別の製薬会社と思われる人々に、
付け狙われるようになる。
太郎が出会う奇妙な人々に助けられ、
太郎は謎の人物たちに立ち向かっていく。
死んでいるので命を狙われると言う事はないし、
二度と死なないので死の恐怖も感じない。
死んだ人間を生き返らせる(生きてないけど)、
すると二度と死なないので、永久に生きる事になる。
(生きてないけど。)とすると・・・
軍事的に利用しようとする悪人も出てくるわけだ。
SF+ハードボイルドである。
大沢作品にはこのようなSFや超能力、超常現象などを
テーマにした物も多い。だから広がりがある。