【予備群も危ない!糖尿病でリスク上がるがんと認知症】「糖質以外何を食べてもいい」は高血圧の危険 バランス悪い食事で栄養偏る
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糖質制限は賛否両論あるものの、いまなおメタボ中高年に人気のダイエット法だ。最近では、ロカボといったり低糖質といったりする、ゆるやかな糖質制限を実行している人も多いだろう。
糖尿病患者の食事療法としても、糖質制限は受け入れられつつある。日本ではまだ認められていないが、アメリカ糖尿病学会では食事療法の選択肢の1つとして推奨されている。食事療法というれっきとした治療法なので、食事内容に対する糖質の割合などの規定があり、正しく行えば健康的に体脂肪を減らすことができる。
しかし、糖尿病患者ではない人が糖質を極限まで控えたり、脂質や塩分をとりすぎたりするなどの間違ったやり方をすると、他の病気になってしまうことがある。
東京・品川イーストワンメディカルクリニック院長の板倉弘重医師は、1つの栄養素だけに注目しても健康にはならないと言う。
「肥満の人が体脂肪を落とすために、ゆるやかな糖質制限をするのはいいことだと思います。しかし糖質だけを気にして、脂質や塩分やミネラルなどにまったく注意を払わずにバランスの悪い食事を続けると、体脂肪は減ったとしても脂肪肝になったり高血圧になったりする危険性があります」
脂肪肝は栄養の偏りによってもなる。脂肪肝になって肝機能が落ちると、糖尿病、高血圧、脂質異常症を悪化させ、動脈硬化にも直結する。脂肪肝になるだけでも、心筋梗塞、脳卒中、認知症、肝がんなどにもつながるので放置してはおけない病態だ。
「若い人の認知症の多くは、血管が傷んでなるものです」(板倉医師)
また、血液検査の1項目がよくない、1つの臓器の調子がよくないのであれば、高血圧なら降圧剤を、糖尿病なら糖尿病薬を飲んできちんと数値を下げればいいだろう、と考える人もいるだろう。しかしそれも危険だと板倉医師は言う。
「血糖に加えて、血圧や脂質も含めた統合的な治療を行うことが糖尿病の合併症の予防に有効であるということが、(前回説明の)J−DOIT3という研究で 明らかにされています。薬で数値を下げるということは、体の中の一点だけを変えさせるということです。そのため、薬に頼るだけでは体の全体的な生理機能の 改善には結びつかないのです」
ダイエットも健康管理も、一点集中では達成できないということだ。
では、糖尿病にも他の生活習慣病にもならないためにはどういった食生活を送ればいいのか。別項の食生活のポイントを参考にしてほしい。加えて塩分を控えることも忘れずに!
また、血糖値管理という点からは、食事を抜いたり回数を減らしたりしないことも大切だ。
次回は「糖尿病は自己責任とは言い切れない」ことについて。(石井悦子)
■糖尿病・生活習慣病を撃退する食生活のポイント □野菜、タンパク質、炭水化物の順に食べる □タンパク質は肉、魚、大豆を「1:1:1」の目安で □炭水化物は少なめに □脂(油)は、古くなった揚げ物などの酸化したものや、トランス脂肪酸(人工的な油)は避ける