拉致被害者の入国を北朝鮮が今になって認めたという情報操作
は2018-03-18
きのう3月17日、共同通信が驚くべきスクープを報じた。
すなわち、北朝鮮が2014年に、日本政府が拉致被害者と認定している田中実さん(失踪当時28歳)について、「入国していた」と日本側に伝えていた事が16日、分かったと。
本人は平壌で家族と共に生活しており、現地に残る意向であると。
そう日本政府に北朝鮮が伝えていたというのだ。
日本政府関係者が明らかにしたという。
この共同通信のスクープ報道は極めて意味深長だ。
2014年と言えばストックホルム合意がなされた年だ。
つまりストックホルム合意に至る交渉の過程において、北朝鮮はあらたな拉致被害者を認定し、しかも北朝鮮で生きている事を日本政府に伝えていたというのだ。
物凄い新たな情報である。
こんな重要な情報がなぜ当時公表されなかったのか。
そしてなぜ今ごろになって報道されたのか。
しかも共同通信のスクープとして。
共同通信のその記事は、外務省に確認を求めたが「コメントできない」と答えたという。
外務省にとって都合の悪い情報が流れたということだ。
しかし外務省の内部告発ではないだろう。
こんな情報を告発しても告発者にメリットはないからだ。
おそらく日本政府関係者とは官邸筋に違いない。
しかも内部告発ではなく意図的にリークして書かせたのだ。
おりから米朝首脳会談が5月にも開かれる事になり、安倍首相は拉致問題も米朝首脳会談の議題にして米国の圧力での進展を期待している。
その為に、このタイミングで拉致被害者がほかにも存在し、しかも生きている事をアピールしたかったのだ。
しかし、これは大きな賭けだ。
もし横田めぐみさんをはじめとした拉致被害者の中心的な人たちの解放が米朝首脳会談でさえも出来なければ、その失望と反発は大きいものになる。
そして、私は解放される可能性は限りなく少ないと思う。
もし解放されるなら、あのストックホルム合意の後に、解放に向けた動きがあったはずだ。
しかし、頓挫したままだ。
ストックホルム合意が出来た2014年5月は、私が突然目の機能障害に見舞われて長期入院を余儀なくされていた時だ。
することがなく毎日病院でニュースを眺めていた。
そして偶然テレビのキャスターがとんでもない失言をした事を見つけた。
つまりストックホルム交渉とは、途中から拉致被害者救出の交渉ではなく、記者発表をどうするかというアリバイ作りに終始した交渉になったと、舞台裏をばらしたのだ。
あの時、北朝鮮側は、今度のスクープで明らかにされた田中実さんも含め拉致被害者の情報をすべて日本側に伝えたに違いない。
しかし、その情報が日本側にとって都合が悪かったの日本側は受け取れなかったのだ。
もちろん公表など出来なかった。
だから交渉を更に続けるという形でごまかしたのだ。
あくまでも交渉継続の手続きと内容の合意だけにして、拉致問題の解決は全員を生きて返すという出来もしない解決策に向かって永遠に交渉を続ける芝居をしたのだ。
あの時、菅官房長官は記者会見でうろたえた。
ウソをつくしかなかったからだ。
その狼狽ぶりを私は見逃さなかった。
繰り返し書く。
3月17日の共同通信のスクープ報道は意味深長だ。
米朝会談でトランプに頼み込んでも解決出来なかった、あるいはトランプ大統領のおかげで拉致被害者の解決に向けた進展が見られたが、その結果は残念なものだった、しかしトランプ大統領が解決してくれたのだからもはやそれを受け止めるしかない、そう言って安倍首相は拉致被害者家族たちに最終決着を受け入れる事を迫るつもりなのだろう。
どっちにころんでも、米朝首脳会談で拉致問題を決着させるつもりなのだ。
あるいはひょっとして米朝首脳会談が決裂し戦争が起きるかも知れない。
そうなったら拉致被害者問題も吹っ飛ぶ。
やはり安倍首相は今度の米朝首脳会談で拉致問題を終わらせるつもりだ。
私はそう推測している。
それにしても、これだけ意味深長な共同通信のスクープ記事なのに、なぜ大手紙が後追いして調査報道をしないのだろうか(了)