自殺を防ぐために 知っておきたい「TALKの原則」
3月は例年、月別自殺者数が最も多くなることから、厚生労働省は「自殺対策強化月間」と定めている。そこで、日本自殺予防学会理事長で、帝京大学医学部附属溝口病院精神神経科教授の張賢徳さんにお話を伺い、前編では3月に自殺者が増える要因や、人が自殺を考えるプロセスについて解説した。後編では、日本で自殺予防対策の取り組みが進められてきた背景や、身近な人が「死にたい」と言葉にしたとき、それを防ぐ「ゲートキーパー」の役割を果たすための心得「TALKの原則」について紹介する。
■90年代後半、金融破綻を契機に自殺者が激増
――前編「医師が語る 自殺する人と、踏みとどまる人の違い」では、「1998年に前年の自殺率を35%も上回り、自殺者が3万人を超えたことをきっかけに、国を挙げての自殺予防対策が進められることになった」と伺いました。自殺率が激増した背景には、どのような要因があったのでしょうか。
日本の自殺者数の推移を振り返ってみると、1998年に3万人を超えて以来、2011年まで14年間、3万人超で高止まりの状況が続いていました。
※厚生労働省「平成29年版自殺対策白書」の「自殺者数の推移」(自殺統計)より97年の自殺者数は2万4391人でしたが、98年には3万2863人に急増。前年比約35%増となり、世界を震撼(しんかん)させました。
では、当時の日本では何が起こっていたかというと、「山一ショック」と象徴的に語られる大規模金融機関の破綻です。97〜98年にかけては、四大証券に数えられた山一證券の自主廃業、長銀(日本長期信用銀行)、日債銀(日本債券信用銀行)の経営破綻が相次ぎました。山一證券の野澤正平社長(当時)が号泣しながら行った謝罪会見が繰り返し報道され、私自身も「この国はどうなってしまうんだろう」と暗澹(あんたん)たる気持ちになったことを覚えています。
こうした金融危機を契機に失業率や倒産件数なども急増し、結果として次に示すように、中高年男性の自殺率の激増につながったと考えられます。』
専門家ではなくてもその人を救おうと言った一言で、自殺を防げるのではありませんか。
その一言が、人を生かすも殺すもすると言うことです。
過去に死ぬような思いした経験のある人に救われることも多いのではと思います。