有識者の意見がひととおり出そろったが意見は分かれたままだ。
それもそのはずである。
天皇陛下が提起された問題は、この国の天皇制についての核心的問題であるからだ。
天皇陛下が8月8日のお言葉で伝えたかったことは何か。
これまでの報道や、天皇陛下のご学友、側近、安倍首相は宮様たちの証言なども参考にして、私なりに要約すれば、次の如くだ。
天皇はかねてから生前退位のお気落ちをお持ちだった。
そしてこの天皇の生前退位は、決して初めての事ではなく、天皇制の長い歴史の中では、かつて行われたことがあった。
しかし、旧帝国憲法下で成立した皇室典範と、それを作った当時の為政者は、それを認めなかった。
戦後になって、民主憲法の成立とともに天皇の地位は象徴天皇として根本的に変わった。
それにも関わらず、皇室典範は明治の頃と同じものが引き継がれた。
天皇陛下は、決して公務を減らしたい為に退位を言い出したわけではない。
ましてや、早く退位したいから生前退位を言い出したのではない。
それどころか、象徴天皇としての公務は自分が在位するかぎりは天皇の手で遂行されるべきで、決して摂政などを置いて代行させるべきではないというお考えだ。
それが老齢とともに十分できなくなった。
象徴天皇のつとめを十分に遂行できない以上、後継天皇に天皇を譲ることによって、自分の求める象徴天皇の役割が継続されることを希望する。
だから、退位は自分限りの特別扱いであってはならない。
皇室典範を新憲法下で改正し、制度的なものとして認められるべきものだ。
以上が天皇陛下のお考えなのである。
これを要するに、退位は、新憲法下の象徴天皇制にふさわしい形で制度的に認められ、退位は、新憲法下の象徴天皇制にふさわしい皇室典範の改正によって実現してもらいたいということだ。
そしてこれはまさしく安倍首相にとって究極の難題なのだ。
しかし、安倍首相はこの難問でさえごまかして乗り切ろうとするだろう。
有識者の意見がまとまらない以上、最後は政治が決めるしかない。
しかし、さすがの安倍首相も、天皇の退位問題だけは、自分の考えで強行することははばかられる。
そこで、与野党を巻き込んだ政治の責任で退位問題を解決するつもりだ。
追い込まれるのは野党だ。
そもそも天皇制に反対する共産党は、野党共闘を優先して天皇制を棚上げしたから、議論に積極的に参加できない。
民進党は、皇室典範の改正を求めて特例法で逃げようとする安倍首相と対決姿勢を見せるだろうが、天皇の生前退位のご意向に逆らうのか、おことばの早期解決の足を引っ張るのか、と批判され、最後は安倍自民党と連携するしかない。
天皇陛下の公務負担軽減に同情的な国民は、おことばの早期解決を歓迎する。
かくて、特例法による、今上天皇限りの生前退位が、与野党一致で認められることになる。
天皇陛下の国民に対する渾身の呼びかけが、既存の政党、政治家によってあっさりうっちゃられる。
天皇陛下はなすすべなく沈黙するしかない。
さぞかし無念だろう。
天皇陛下のお言葉に対して既存の政党、政治家が結論を出す前に、何としてでも憲法9条を国是とすることを公約に掲げる新党憲法9条実現し、その存在を天皇陛下に知らせることが私の悲願である(了)
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