浅野秀弥の未来創案
【不安な地下鉄民営化】
運転資金さえ枯渇しかねない
大阪市議会で2度にわたって否決された市営地下鉄の民営化が、開業以来10年連続赤字で全体収支の足を引っ張っている今里筋線の将来の延伸の可能性を担保することで自民党が審議に応じ、議会の3分の2の賛成が必要なハードルがクリアされる可能性が出てきた。
同線延伸は現実性としては到底応じられない話で、市長が「将来の可能性まで封じることはできない」として、単なる絵に描いた餅を示したに過ぎな い。それでも同じ土俵に上がって論じるというのだから、自民党市議団は“市営地下鉄の将来性”についてどのような青写真を持っているのか首をかしげてしま う。
もっとも多額になる交通局職員の退職金は、東京メトロのように継続雇用の形を取らず、希望退職者は最大45%加算、新会社転籍者は最大20%の加算というから、新会社発足時点で1006億円も要る。
設立登録免許費用だけで100億円近く要るし、抱えていた企業債の借入金5千億円も一括返済しなければならず、市中金融機関から新たに借り入れなければならない。
交通局には次年度末で約1562億円の現金がある計算だが、退職金と登録料、さらに諸経費などを引くと数十億円単位しかお金が残らない。丸裸で民営化させて利用者の望むような施設整備や安全対策の推進が果たして可能なのだろうか?
喫緊の課題として、最も乗降客の多い御堂筋線で現在は天王寺、心斎橋などわずかな駅しか導入されていないホームの安全柵設置を増やすことがこんな懐の状態で可能なのだろうか?
先の福岡市内での地下鉄工事中に起きた大規模な陥没事故のように、大都市での道路下を利用した地下鉄路線は、通常の鉄道事業とは比べものにならな い安全対策が必要だし、都市ならではの地震津波などに対する高度な防災計画が欠かせない。なぜ地下鉄民営化を行った後に、大阪市の100%子会社にするの か? 市の運営費が約70億円しか残らないのに。これでは天災への危機管理や市民サービスへの対応は到底不可能だ。
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