足腰大丈夫な内に、出来る限り不要雑物整理をしようと決心してから久しいが、正直あまり捗っていない。書棚や天袋、押入れ等に詰め込まれていた古い書籍や辞書、百科事典等の類も、ここ数年間で大胆に整理処分してきたつもりだが、中には、「これ、面白そう?」等と目に止まり、残してしまったものも結構有る。その中のひとつに、多分、長男か次男かが、学生時代に使っていたものに違いない、小町谷照彦著 文英堂の「小倉百人一首」(解説本・参考書)が有る。パラパラとページを捲ってみたところ、なかなか詳しく、分かりやすく、決して、「今更 向学心?」なーんてものではなく、子供の頃、作者や歌意も分からないまま、正月になると必ず家族でやっていた「百人一首かるた取り」を思い出して懐かしくなってしまったからである。
「小倉百人一首」は、奈良時代から鎌倉時代初期までの百人の歌人の歌を、藤原定家の美意識により選び抜かれた秀歌であるが、時代が変わっても、日本人の心情が呼び起こされるような気がしてくる。
ブログネタに?、頭の体操に?、いいかも知れない等と思い込んでしまい、昨年、一昨年、「春」「夏」「秋」「冬」、季節を詠んだ歌を取り上げて、ブログに書き留めたが、今回は、最も数の多い、「恋」を詠んだ歌を取り上げて、順不同、書き留めてみることにした。
(ネットから拝借画像)
百人一首で「恋」を詠んだ歌 その9
恨みわび ほさぬ袖だに あるものを
恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
出典
後拾遺集(巻十四)
歌番号
65
作者
相模
歌意
相手の薄情さを恨み悲しんで、涙の乾くひまさえない袖さえも
朽ちないでこのようにあるのに、この恋のために、
浮き名が立って、朽ちてしまいそうな私の名が、
まことに口惜しいことです。
身悶える女性の恨みがゆれ動いており、
不幸な片思いの悲しみを、女性的立場で実感を込めて詠んだ歌。
注釈
「恨みわび」・うらめしく思い悲しむ の意。
「恋に朽ちなむ」・・恋して、捨てられ、その評判のため、
世間から見放されてしまいそうな の意。
「名こそ惜しけれ」・・「名」は、作者の評判のこと、
「こそ」は 強意の係助詞。
相模(さがみ)
大江山の酒呑童子(しゅてんどうじ)討伐で有名な源頼光の娘で、後冷泉天皇の頃、相模守大江公資(おおえきんすけ)の妻となったため、「相模(さがみ)」と呼ばれた。かなり自由奔放な恋愛生活をしたとも言われており、のちに大江公資が遠江守として任地に下る時には、別の女を連れて行き、置きざりにされた。一条天皇の皇女脩子内親王の女房として出仕、当時第一流の女流歌人として活躍した。家集「相模集」が有る。
狂歌
恨みわび ほさぬ袖だに あるものを この四五日は 雨続きでは
参照・引用
小町谷照彦著「小倉百人一首」(文英堂)