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諸田玲子著 「紅の袖」

2019年02月11日 08時37分32秒 | 読書記

図書館から借りていた 諸田玲子著 「紅の袖」 (新潮社) を 読み終えた。

紅の袖(くれないのそで)

幕末 ペリーが浦賀に来航、さらに江戸湾にまで乗り込んできて 恐れおののき、慌てふためいた時期、幕府は 黒船迎撃のため 御台場に砲台築造を計画、川越藩もその任にかりだされる。
物語は その任に携わるため 赤坂溜池台の上屋敷から海辺の下屋敷に移ってきた川越藩士樋口杢右衛門とその妻女沙代の家で、杢右衛門の朋友である彦三郎と 雇い入れた女中みおが それぞれ隠し事を秘めながら ひとつ屋根の下で 不信と愛憎の渦に巻き込まれながら暮し始めるところから始まっている。
諸田玲子氏は 女性の心理描写が巧みな作者である。
「紅の袖」も 終始 沙代の心で書かれている。
題名の「紅の袖(くれないのそで)」は 沙代が見た夢、黒船が現れ 大筒から弾丸が放たれる戦闘場面、
「沙代は まだ騒乱の坩堝(るつぼ)にいた。馬がいななく。軍兵が駆けまわる。禍々しい船は見る見る迫って来た。波飛沫を上げ 砂煙を立て、人も馬も大筒も蹴散らし押しつぶして 今や沙代の眼前まで迫っている。ああ ぶつかる--。刹那 轟音がして土砂が崩れた。白い骨が飛び散り灰色に染まった空に紅の布織が舞い上がった。あれは。だれの袖?手を伸ばしたその時、目が覚めた」
から 付けられてものなのだろうか。
小藩川越藩のお家事情も絡まる長編時代小説、黒船来航の幕末時の幕府の騒乱や庶民の不安定な暮らしが 主人公沙代を通して描かれている。

 

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