(DVD)
映画で見損ねていました。
最近話題のガエル・ガルシア・ベルナル。
ぜひ、みてみたかったのですよね。
ところがこれは問題作ですね。そうお気軽なものではなかった。
罪の王。
それは、ガエル・ガルシア・ベルナル演じるエルビス自身のことでした。
海軍を退役した彼は、まだ見ぬ父に会うためにテキサスの小さな町にやってきます。
父は、裕福な牧師として、妻・息子・娘に囲まれ幸せに暮らしていた。
そこでは切り捨てた過去の女性関係、見捨てた息子などのことを蒸し返すことは、迷惑以外の何者でもない。
拒絶されたエルビスはその時点で、罪の王となる覚悟を固めたのでしょうか・・・・。
なにしろ、常に冷静、計算づくに見えます。
この感じ、なんだか「太陽がいっぱい」のアランドロンに似てるなあ・・・、そういえば彼の端正な顔の雰囲気も・・・。
と思ったら、ちゃんと、チラシの中にも書いてありましたね。
「・・・今回は、名作 『太陽がいっぱい』のアランドロンに匹敵する危険なセックスアピールを発し、この難役を圧巻の演技で魅せる」
・・・と。
危険なセックスアピールですか。
うまいことをいいますねえ。
まさしく、でした。
まずは、父の娘、つまり自分の妹である16歳のマレリーに接近し、その危険なセックスアピールとやらで、彼女をとりこにしてしまいます。
次にはこの二人の関係に気づき、部屋をたずねてきた兄をあっさりと殺してしまいます。
その死体処理も冷静そのもの。
ここで、驚くべきはその父の態度。
行方不明となった息子を初めは必死で探していたのですが、あるとき、もう一人の、「息子」がいることを思い出して、家に呼ぶのです。
あっけなくも身代わりを見出して、それで満足してしまう。
牧師でありながら、計算づく。
冷徹なその態度には彼の人間性が透けて見えます。
とうとうある日父は、牧師として、礼拝に来た人たちに真実を語ります。
過去の罪でできた息子だが、受け入れることにした・・・と。
人によってはこれはたいそうな「美談」に聞こえたことでしょう。
ただし、マレリーはここで始めて、自分が関係を持ってしまった男が実の兄であることを知り、愕然とするのです。
その後の展開は一気。
もう、これ以上自分のたくらみを隠せおおせないと悟ったエルビスは、妹と父の妻を殺害し、家に火を放ちます。
罪を数えたらいくつになるのでしょう・・・。
すべてが嘘で、実の妹を犯し、殺人、死体遺棄、放火・・・・
「罪の王」の座に着きながら、自分を捨てた父を追い詰めていく。
「幸福に潜む闇を突く現代の寓話。」
・・・これもチラシにある、この表現で、締めくくることとしましょう。
ガエル・ガルシア・ベルナル。いいですね~。
また、ごひいきが一人増えてしまいました。
2005年/アメリカ/105分
監督:ジェームズ・マーシュ
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ウィリアム・ハート、ローラ・ハーリング、ベル・ジェームズ