「ヒンデンブルク号の殺人」マックス・アラン・コリンズ/阿部里美訳 扶桑社海外文庫
ヒンデンブルク号といえば、さすがに私でも名前だけは耳にしたことがある、かつて爆発して大惨事となった飛行船です。
そのただでさえ危険な飛行船の中で殺人事件とは・・・、意味があるようなないような・・・。
この作家、マックス・アラン・コリンズはこの作品の前に「タイタニック号の殺人」というのを書いていまして、まあ、「世紀の危機一髪シリーズ」という感じですね。
この本は主人公をセイントシリーズで名高い実在の作家レスリイ・チャータリスとし、ヒンデンブルク号についても、かなりのリアルさで描いています。
さて、せっかくなので、ちょっとこの飛行船について調べてみました。
ヒンデンブルク号は1935年ドイツのツェッペリン社によって製作されました。
ちょうどナチスドイツが勢力をつけ始めた時代です。
ドイツ、アメリカ間を二日半で運行。
全長245メートル、これはジャンボジェットの3倍ということですが、レストランやシャワー室なども備えた、超豪華飛行船。
もちろん、相当裕福でなければ乗ることなどかなわないでしょう。
現在の価値に換算すれば運賃800万円也とか・・・。
水素の浮力を用いて浮かぶわけですが、可燃性の水素よりヘリウムのほうが安全と当時でもわかっていた。
ところが、ヘリウムの産出国であるアメリカがドイツへの供給を拒んだために、やむを得ず水素を使用。
問題の事故は63回目のフライトであったとのこと。
タイタニック号は処女航海でしたから、こちらは事故までに、優雅な空の旅をした人がかなりいたというわけです。
さて、問題の爆発事故は1937年5月6日、アメリカのレイクハーストでの着陸時に起こりました。
静電気により飛行船の塗料が発火、それが水素に引火したというのが原因の有力説のようですが、テロによるものだというまことしやかな説もあるようです。
この本では、ナチスの抵抗勢力によるテロという設定になっています。
乗客97人中35人と地上にいた1名が死亡。
これは着陸寸前ということでかなり高度が低くなっていたため、この程度で済んだといっていいのでしょう。
しかし、この事故により、以後飛行船の開発はなくなってしまいました。
本の内容もそっちのけで、なんでこんなことを書いているのかというと、飛行船というものについロマンを感じているのだと思います。
ゆったりと空を漂いながら、地上を眺める。
なんて優雅なのでしょう。
海上の豪華客船などよりよほど乗ってみたい気がするのですが・・・、ないものはしょうがない。
数ヶ月前、札幌の上空にコマーシャルのための飛行船が飛んでいましたが。
その時も、乗ってみたかったんですー。
実は高所恐怖症なのに!
作品中、飛行船がニューヨーク上空を飛ぶシーンがあります。
地上やビルからこちらを見上げている様子がよく見える。
お互いに手を振ったりしている。
飛行船から高層ビル街を眺めながらゆったりと進んでゆく。・・・いいですねえ。
なんてわけで、いろいろ学習させていただきましたこの本とはよい出会いでした。
満足度★★★★