(DVD)
これは、戦争が舞台ではありますが、情熱的な恋愛を描いたものです。
ただ、やはりその戦争に翻弄され、狂ってしまった恋愛の物語。
162分という大作ですが、この物語を語るには、このボリュームがやはり必要なのだと思います。
1944年。イタリア。
ある部隊に全身火傷を負い、記憶の大半を失った重症のイギリス人と思われる患者が運び込まれる。
彼の担当看護婦となったのは、ハナ。
彼女は、恋人と親友をこの戦争で亡くし、失意の中にいましたが、
懸命に役目を務めています。
この患者をこれ以上移動させることはよくないと判断し、
修道院の廃墟に2人だけで残り、看病することになる。
切れ切れに、患者がとりもどしていく記憶。
そこには、思いもかけない情熱の物語があったのです。
彼の名は、アルマシー。
ドイツ系の名前なんですね。
サハラ砂漠の地図を作る仕事をしています。
その関係で知り合った、ジェフリーとその妻キャサリン。
アルマシーは彼女の美しさと聡明さに魅せられます。
しかし相手は人妻。どうにもならない思いではありました。
しかしあるとき夫は別の用事で旅立ち、
キャサリンだけが居残ったことから、急速に接近していく2人の心。
とうとう2人は結ばれますが、お互いの罪悪感は深まっていく。
ついには夫にもその関係を知られてしまうことに・・・。
この作品で印象的なのは、砂漠の岩山の中にある洞窟。
これは実在する、ジルフ・ケビールの「泳ぐ人の洞窟」。
古代人が描いたと思われる、泳ぐ人の絵が無数にある。
砂漠の中に、泳ぐ人の絵。
なんとロマンを感じるではありませんか。
ある日、そこのキャンプの撤収のため、
アルマシーはジェフリーの飛行機の到着を待っていました。
しかし、その飛行機は無謀にもアルマシーめがけて突っ込んできた。
嫉妬に悩んだジェフリーの自殺行為です。
ジェフリーはそれで命を落としましたが、同乗していたキャサリンは重症。
やむなく、アルマシーはキャサリンを洞窟に残し、救助を求めて歩き出します。
3日砂漠を歩き続けて、やっと町にたどり着いたのですが、
そこで名前を名乗ると、ドイツのスパイ容疑で拘束されてしまう。
救助の願いもむなしいまま・・・。
しかし、ここからがまたいっそうドラマチックな展開なのですね。
彼は辛くも脱走を成し遂げ、彼の作ったサハラの地図をドイツ軍に売りつけて、飛行機を手に入れた。
そうして、ようやくあの洞窟に戻ることができたのです。
この愛。この執念。
愛のためなら、ためらいなく自国の利益も敵に売り渡す。
これを誰が責めることができるでしょう。
ただ、彼が戻ったときには、すでに彼女は・・・。
そのあと、彼の乗った飛行機が事故で炎上。
重症の彼に付けられた呼び名は皮肉にも、『イギリス人患者』。
戦争が、人の運命をこんなにも簡単に捻じ曲げてしまう、ということなのだと思います。
なにやらセクシーでもある、砂漠の砂の陰影。
その上を行く複葉機。
とても印象的でした。
1996年/アメリカ/162分
監督:アンソニー・ミンゲラ
出演:レイフ・ファインズ、ジュリエット・ビノシュ、コリン・ファース、クリスティン・スコット=トーマス