(DVD)
第一次世界大戦時、日本軍はドイツ軍の極東拠点地、中国の青島を攻略。
その時のドイツ兵捕虜4700人が、日本国内12箇所の収容所へ移され、
その後またさらに、徳島県の坂東収容所に移送された。
さて、これはその時の実話だというのですが、注目すべきはその収容所長の松江。
彼は、ここは監獄ではなく収容所だとして、
ことさら厳しい監禁状態とはせず、
収容所内で新聞を発行したり、パン職人をそのまま、パンつくりに起用したり、
時には町の人々とも交流。
つまり、当時においては、ドイツの持つさまざまな技術、これは日本においては大変貴重なものだったわけです。
これこそ、まさしくチャンスと見て取って、彼らを優遇。
まあ、そのような打算ばかりというわけではありません。
同じく国のために、命をかけて闘ってきたもの同士、お互いに尊重しあおうという気持ちがあったからこそなのでしょう。
また、逆に彼らには日本語や柔道を教えたりする。
まさしく異文化交流というヤツです。
日本で敵の捕虜といえば、ただただ虐待ばかりが連想されますが、
このような大人物もいたというのはなんだかうれしいですね。
戦争が終焉を向かえ、彼らが帰国する時に、町の人々を招いて音楽会が開かれます。
それはドイツ兵たちによる、ベートーヴェン、第九。
コーラス部分は、わざわざ男性コーラスに書き換えての熱演。
これが日本での第九、初演であるとか。
私も大好きなのですよね。第九が。
年末はたいてい聞きにいきます。
華やかで心が沸き立ちます。
さて、この「バルト」というのはドイツ語でヒゲの意味。
松江所長がはやしていたそのヒゲ。
松平健も、さぞかしイヤだっただろうと思えるそのヒゲは、実にカッコ悪いのです・・・。
しかし彼は自らの出自である会津藩を誇りに思っていて、
その象徴であるヒゲをことさら大事にしている。
それが彼のトレードマークなのでありました。
・・・なので、カッコ悪くても仕方ないのです・・・。
このように、いい話ではあるのですが、ややおとぎ話風になりすぎたきらいがある。
イヤ、これはこれでいいのでしょうか・・・。
そもそも、生臭くは描けない話なのかも知れません。
2006年/日本/134分
監督:出目昌伸
出演;松平健、ブルーノ・ガンツ、阿部寛