「恐怖の報酬」日記 恩田陸 講談社文庫
ここのところ立て続けにエッセイばかり読んでいたのは、
この間「深海のYrr」という超大作を読んで、物語世界にどっぷりつかったことの反動のようです・・・。
しかし、このたび、改めて思ったのは、
まさに、エッセイというのは著者の性格やものの考え方・感情などがモロに出るものなのだなあ・・・ということ。
たとえば、生活感丸出し、というかそれがウリとなっているオバサマ。
生活感とは無縁の清潔な詩的感覚を持ったおにーさん。(年齢からすると、オジサンなんだけど、すごく若く感じる)
年の功。渋く落ち着いた風情で、旅に寄せて、薀蓄を傾けるオジサマ・・・。
・・・このように読み進んで、さて、次に来たのは、私の大好きな作家恩田陸。
ううむ・・・。なんというか、まるで我が家に帰ってきたように落ち着きます。
そして楽しい!!
さすが、文を書くのが商売の方です。
文章にユーモアがあふれ、等身大で、変な力が入っていない。
緊張感なく、するすると読み進むことができる。
作家の底力を見ました。
さて、この書名の『恐怖の報酬』とは・・・。
彼女はとにかく飛行機が大の苦手というのです。
「のだめカンタービレ」の千秋真一君が引き合いに出るくらい。
とにかく、飛行機に乗らなければならないと決まった時からじわじわと感じる恐怖。
しかし取材のため、あるときついに、イギリス・アイルランドへ向けて飛行機に乗らなければなくなってしまった。
さあ、大変。
私が思うに、ここまで飛行機を恐怖するのは、彼女の想像力があまりにもたくましいせいではないでしょうか。
この本の中でも、彼女がふと見たもの、聞いたものから、
いろいろなストーリーがむくむくと湧き出てくるのをいくつか目の当たりにします。
同じように、飛行中のありとあらゆる事故や事件のことを想像しまくってしまうのではないでしょうか・・・。
この大いなる恐怖に耐え、旅先で得たイメージを今後の作品に生かすことができれば、それが報酬である、と彼女は言っています。
この本には番外編として、
麒麟ビール、サッポロビール、オリオンビールの工場見学体験記もついていますが、これがまためっぽう楽しい。
寝台列車にて、わが札幌のサッポロビール工場にもいらしたようですが、
ビールにジンギスカン、たっぷり堪能していただいたようで、何よりでした。
満足度★★★★★