「さまよう刃」 東野圭吾 角川文庫
社会派サスペンスとありますね。
本格推理好きの私ですので、東野圭吾作品でも、やや、好みの方向とは異なるんですが・・・。
なかなか設定がしんどいです。
主人公となる長峰の一人娘が、未成年の少年グループに蹂躙された上、薬物の過剰摂取により死去。そのまま、死体遺棄された。
ある密告電話により、その犯人を知った長峰は、真実を求めてその少年の家に侵入し、ちょうど帰宅したその少年を殺害。
もう一人の犯人にも復習を果たすべく、逃亡したその少年の行方を追う。
ここで、素直に密告の内容を警察に告げなかったのは、
たとえ犯人が捕まったとしても、未成年ということで、相応の刑罰を受けることにはなりえないと思ったからです。
娘への一途な愛。
長峰は大変しっかりした人物なのですが、このことに関してだけは、復讐のむなしさも自覚しながら、犯人を許すことができない。
彼自身も殺人犯として指名手配を受け、逃亡を続けながら、真犯人を追う。
この二重構造は結構スリルがあります。
でも、あまりにも事件がリアルに重い感じがして、つらいです。
こんな、どうしようもない無自覚の若者が実際いそうなのもいやな感じ・・・。
作品中では、マスコミも一般の人も、かなり長峰に同情的で、彼を追う警察官でさえ、彼を逮捕することにためらいがある・・・。
まあ、そうですよね、
もちろん読者としても、うまく切り抜けてなんとか復讐を果たして欲しいと願ってしまいますね。
ラストの、登場人物ほぼ全員が終結する上野駅のシーンはなかなかの見所でした。
それにしても、最近は、小説より現実の方が信じがたいですね。
突然一人の男がにぎわう歩行者天国に車を突っ込み、ナイフを振りかざす・・・。
こんな小説は誰にもかけないでしょう。
もし書いたとしたら、リアリティに欠けるなんていわれそう・・・。
やはり私はいっそ現実離れした、ありえないストーリーを楽しく読むほうが性にあっているようです。
満足度★★★