映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」 黒井勇人 

2008年06月29日 | 本(その他)

「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」 黒井勇人 新潮社

これは珍しく、娘が買ってきて、面白いから読めという。
なになに、
「まさに21世紀の「蟹工船」
史上最強のワーキング・プア(笑)が放つ、スレッド文学の進化型・・・・
」???
スレッド文学?・・・つまりあの「電車男」形式か。
書き手の「マ男」(コンピュータプログラマ男を略してこうなった。)に対して、
いろいろな人の書き込みが加わりながらストーリーが展開していく。
すごくシビアな内容ではあるのですが、ユーモアたっぷりに話は進みます。

この、マ男くんは、ある怪しげな中小会社(これを称してブラック会社)に新入社員として入社するのですが、
そこにいる上司、先輩、とんでもない奴ばかり。
いきなり仕事を渡されても、わけがわからず、
聞こうと思っても誰もまともに教えてくれない。
仕事はきつくて毎日深夜までの仕事が続く。
実は彼は、いじめが元で中学もほとんど不登校。
そのまま引きこもりでほぼ10年。
しかし、母親が病死し、彼女が死の間際まで心配していたのが彼の行く末で、
なんとか社会に出てほしいと・・・。
彼はその思いを受け止め、必死に勉強をして、資格をとる。
しかし何しろ中卒なので、就職も難しかったけれど、
ここの社長さんがそういう人柄だけは(?)良い人で、受け入れてくれた。
・・・そういうなかなか泣かせる背景があるわけです。

ところが、そこにいるのは、わけのわからないダメな人ばかり。
ただ、一人、まるで掃き溜めのツルのように、
仕事もできて人格も秀でた信頼できる先輩がいて、
その人がいたから彼は仕事を続ける気になった。

そうこうするうちに、また彼の後輩の新人が入ってきたりして、
会社内のてんやわんやが続いていく・・・、と。

コンピュータ用語なんてそもそも、意味不明ですが、まあ、差し障りなく読めました。
もちろんすべての会社がこうではないと思いますが、
多くの人がこんな風に身もココロも磨り減らして、
ボロボロになって働いているというのが、リアルに実感できてしまいます。
しかし、この話は一体どう結末を迎えるのか、予想もつかなかったのですが、
なんとなんと、意外にも感動のラストが待ち受けていました。
ちょっと、うるっと来てしまいました。
それと、いつの間にか、こんなしょうもない人々の集まりが、チームワーク良くなっていたりするんですね・・・。
結局大切なのは、人間関係なんだなあ・・・と思うしだい。
まあ、この話に比べればウチの職場なんて天国。
・・・と、思うことにしよう。

満足度★★★★