映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ONCE ダブリンの街角で

2008年06月09日 | 映画(わ行)
(DVD)
アイルランド、ダブリンが舞台です。
ギターを弾き、歌をうたうストリートミュージシャンの男。
そして、通りで花や雑誌を売っている女性。
この2人が出会い、つむぎだされる物語。
この映画の凡庸でないところは、つむぎだされるのがストーリーだけでなく、音楽でもある。そこがミソ。
この男女2人の名前がとうとう最後まで出てきません。
どこの街角にでもいる、男と女のストーリー、そういう普遍性を意図しているのでしょう。
男は、父親の職業である掃除機の修理を手伝っており、
女が、修理してもらいたい掃除機を街中ごろごろ曳いて歩くシーンが、楽しい。

女はピアノが好きなのですが、とても高くて買えない。
そこで、時々楽器店のピアノを弾かせてもらっているのです。
男がギターで自作の歌を歌うかたわら、
おずおずと女のピアノが後を追い、歌も合わせていく。
はじめは密やかに、そして、次第に情熱的に。
この2人のセッションのシーンが、とても印象的。
思わず、サウンドトラックを買いたくなります。

この主演の2人は、実際にアイルランドで活躍しているミュージシャンなので、
ステキなのは当たり前なんですが。
2人で音楽に取り組むうちに、2人の気持ちも接近していきますが、
実は女の方は結婚していて、子供もいて、夫とは別居中。
男は、音楽のために、ロンドンへ行くことを決心するのですが、
さて、女はどうする・・・?

キスシーンもベッドシーンもないという、
完璧プラトニックな物語ですが
人の気持ちに、そういうことって必ずしも重要ではないのだなあ
・・・と、改めて思います。
密やかな、街角のラブストーリー。
音楽もご堪能あれ。

2006年/アイルランド/87分
監督:ジョン・カーニー
出演:グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ、ヒュー・ウォルシュ