(DVD)
不思議な物語です。
主人公、レイ・キンセラがトウモロコシ畑の中で仕事をしていると、どこかからささやき声が聞こえてくる。
「それを建てれば、彼が来る。」
周りには誰もいない。それって何? 彼って、誰?
思い当たることも何もないけれど、そんなことが続く。
ある日とうとう、その声と共に、彼の目に浮かび上がったのは畑の中の野球場。
そして、かなり昔、八百長試合の疑惑で球界を追放されたシューレス・ジョー。
この畑の中に野球場を作れというのか・・・?
でも、次第にレイは試してみたくなってきて、妻アニーにその相談をするのですが、
なんとできた奥様でしょう。
どうしてもやりたいのならやってみるべき、と彼の後押しをする。
この奥様は只者じゃないですね。
普通、こんな愚にもつかない話は反対します。
レイはいうのです。誰にでもこんな瞬間があるのではないか。
何かを決断するべき時。
こうすべきだ、こうしたい、というささやきがあるのに、それを無視してしまって、チャンスを逃してしまうということが・・・。
さて、できました。とうもろこし畑の中に、ナイター設備まである立派な芝生の球場が。
しかし、町の人からはバカにされ、収穫も減ったために、たちまち、生活が苦しくなってきます。
そんな時に、球場にやってきたのは、シューレス・ジョーを筆頭に昔懐かしいシカゴ・ホワイトソックスのメンバーたち。
・・・実はもう彼らはこの世の人ではありません。
とにかく野球が好きで、でも、球界を追われて野球ができなくなってしまった人たちの妄執、とでも言いますか、
不意にその特別な球場に現れては練習をして去っていく。
話も一緒にプレイもできますが、彼らはその球場から一歩も出ることはできない。
ユーレイといえばそうなんだけれど、ちっとも怖い存在ではない。ただ、ひたすら野球がしたいだけなのです。
ところが、今度はまた次のささやきが聞こえてきて、レイに新たな使命が・・・。
もう、その土地を手ばなさなければならないくらいに追い詰められているというのに、ささやきに従おうとするレイ。
結局これは、別に野球がテーマでなくても良い。
そのように夢を抱いて、ひたむきに生きる、そういうことの大切さを寓話的に描いているのですね。
子供のように夢を持った人だけが、その球場のプレイを見ることができる。
アメリカ人の野球に対する愛着もひしひしと感じられました。
日本で言うなら、さしずめ王・長嶋の活躍する絶対に強い巨人。
子供たちの憧れ。
そういうときの「野球」ですね。
1989年/アメリカ/106分
監督:フィル・アルテン・ロビンソン
出演:ケヴィン・コスナー、エイミー・マディガン、ギャビー・ホフマン、レイ・リオッタ