「東京するめクラブ/地球のはぐれ方」 村上春樹、吉本由美、都築響一 文春文庫
「地球のはぐれ方」とは、もちろんあの本を意識した題名でして、
つまり旅行案内なんでね。
ところが、これは、観光名所の案内ではない。
観光地としては忘れられた廃墟のようなところ・・・、
あまりにもベタで、おしゃれでないところ・・・、
とにかく、ちょっと変な、いまどきの人はあまり行きたがらないようなところばかりです。
しかも、一泊やそこらではなくて、おいしいところだけでもなくて、
かなりじっくりと、ディープなその地を探ります。
そのラインナップは、名古屋、熱海、ハワイ、江の島、サハリン、清里。
このトップに「名古屋」と来ているのがすごいですね。
「魔都、名古屋に挑む」と題してあるのですが・・・。
『名古屋というのは、メスの入っていない手つかずの状態で外界からは忘れられたまま孤立進化してきた。
特に食べ物で顕著で、名古屋でしか食べられないものはいろいろあるのだけれど、
非名古屋人にとってはどれも、「なんか変」で「なんかずれてる」』
・・・なーんてことが書いてある。
道路が碁盤の目のようで、やたら広い、
というあたりは、あれ?札幌と似ている、と思ったのですが、
彼らの言うには「札幌も似ているけれど、札幌は、異国情緒を感じる。」
「名古屋は道路が広すぎて、ホテルから出て、どっかへ行こうという気にもならない」
・・・と、くそみそです。
名古屋の方は読まないほうがよさそうですよ・・・。
私は、これらのうちどこも行ったことがありませんが、
やはり、この本をよんで、ぜひ行きたいという気にはなりませんねえ・・・。
そういうための本ではないのです。
でも、すごく面白い。
北海道などにいると、熱海とか清里の変化など、そもそもわからないのですが、
かつての賑わいから、ほとんど廃墟のようになっているというような話には
なんだかうなずけるところがあります。
世の中の状況が変わってきていて、人々のニーズも絶えず変化しているということなのでしょうね。
かのダーウィンが言ったとか・・・。
「生き残ることができるのは、強いものではなく、変化できるものだ」と。
しかし、もともと大きな資本をつぎ込んで出来上がったものを
そう簡単に変えることもできなかった、
ましてやバブル崩壊のあとは・・・
ということなのでしょう。
するどい状況分析と、ちょっと無責任な解決策も書いてありまして、
結構楽しめます。
それにしても、返す返すも、
名古屋がこれらの筆頭って、アリ?
満足度★★★