一番初めに16歳の女の子の妊娠。・・・と聞いて私はちょっといやな気がしたのです。
日本でもそんなテレビドラマがよくありますね。
本人は、命は大切だから・・・とかいって、生もうとする。
両親はとんでもないと反対。
しかし、本人の決意は固く、やむなく応援することに。
そして、苦しい出産シーンがあって、無事生まれてめでたしめでたし。
・・・でも、実際大変なのは、そこからなんですけどね。
現実には、子供の世話はおばあちゃんに押し付けて、自分は遊んで歩く、
なんてことになるのではないか・・・。
そんな一時の感傷で、やたらに生むものじゃない・・・。
そもそも高校生で妊娠とは、ナニゴト!
・・・と次第に、オバサンの繰言になってしまうわけではありますが、
そんなわけで、どうもこの手のストーリーは好きになれないでいたわけです。
でも、この映画のあらすじを読むと、ちょっと違うようですし、
なにしろ、本家アメリカではものすごい興行成績を上げている。
悪い話であるわけがない。
・・・というわけで、とにかく見てみましょう、という気に。
しかし、いきなり、オープニングでもうやられましたね。
主人公ジュノが町を歩くシーン、
背景が単純化された線のアニメーションになっている。
なんだか、とってもワクワクさせられます。
ジュノは、確かに今風の軽いノリの女の子ですが、すごく個性的。
きちんと自分の考えを持っている。
そして自分の行動に責任をもつだけの自立心がある。
妊娠がわかったとき、まずは堕胎をしようと考えます。
まあ、それが普通の判断ですよね。
けれど、病院へいくと、その前で、クラスメイトが「堕胎反対」のプラカードを持って立っていて、
彼女が言うには「もう、赤ちゃんには爪も生えているのよ・・・」。
そこで、彼女は急に、気持ちが萎えてしまう。
では、どうするのか。
・・・では、仕方ない、生んで育てよう、とはならないんですね。
子供が欲しい人に養子に出そう、ということにするのです。
ああ、そういう手があるのか。
日本ではそのような制度は一般的ではありませんね。
でも、これって確かに合理的。
自分が生んだ子供に愛情はないのか、と日本なら言われるかもしれません。
でも、ジュノはきっぱりといいます。
今の私には育てられない、と。
私はこの割り切り方に拍手を送りたいと思います。
そうなんですよ。現時点ではそれがベスト。
なんていうか、そこが日本とアメリカの違いだと思うのですが、
親子関係が結構シビア。
小学生までは絶対に子供だけで一人で家に置かない、そのような見守り方をする一方、
ある程度の年齢からは、一人の大人として扱う。
だから、娘が生んだ子を日本なら祖父母が面倒を見るのはお約束、みたいなところがあるけれども、
あちらでは、そもそもそういう考えがない。
実際上の世話、そして経済的なこと、まずは親である自分がなんとかしなければならない、という規範がしっかりあるんですね。
先日見た「ラスベガスをぶっつぶせ」の映画にも、こんなシーンがありました。
進学のための学費がない主人公に、
母親がコツコツとためていたお金を「貸して上げましょうか?」とおずおずと差し出す。
日本ではこんなことあまりないですよね。
学費は親が払うのが当たり前だと思っている。
文化の違いを感じるのでありました・・・。
さて、というわけで、これらをすべて決心してから、初めてジュノは両親に妊娠のことを告げます。
両親も、娘がきめたとことなら・・・と、協力体制。
無論、父親の動揺は隠せませんが・・・。
妊娠中に、もう子供の養子縁組手続きが行われます。
ジュノが探し出したその里親は、望んでいるのに子供ができない裕福な夫婦。
ところが、そちらも完璧な親とは言いがたい。
夫のマークは妙にジュノと気が合ってしまうのですが、
結局、「親」になる覚悟ができない、自分自身がまだ子供の人でした・・・。
う~ん、でもそれはあまり責められないかな。
実際子供が生まれて、その子を胸に抱いて、初めて実感する親の責任、そういうものもありますよね。
さて、肝心のその赤ちゃんの父親なんですが、
これがつい好奇心で結ばれてしまったジュノのボーイフレンド、ポーリー。
彼は見るからにボーっとしていて頼りなく思えるのですが、
実はこれは思わぬ拾い物かも・・・ですね。
あとは知らないフリを決め込むほどの無責任でもない。
ちょっとおっとりで、愛情深く、まじめ。
なぜ、ジュノが彼を好きなのか、だんだん納得できてきます。
本当に、将来は、2人のための子供ができるといいですねえ・・・。
出産シーンでは、オバサンは思わず泣けてしまいました・・・!
なにやら、日米の文化の違いまで思い起こされて、いろいろ考えてしまう映画なのでした・・・。
そうそう、この映画の音楽がまたどれもステキです。
サントラ盤を買いたくなっちゃうなあ・・・。
2007年/アメリカ/96分
監督:ジェイソン・ライトマン
出演:エレン・ペイジ、マイケル・セラ、ジェニファー・ガーナー、ジェイソン・ベイトマン
「JUNO/ジュノ」公式サイト