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おまちかね検屍官シリーズの最新刊です。
題名はそのものずばり、スカーペッタ。
このシリーズの第16弾です。
一番始めの「検屍官」が出たのが1990年ということで、もう20年も前なんですね。
ストーリーの舞台も時代と共に流れ、
始めの頃まだ幼かった姪のルーシーはすっかり大人になり(しかもやや問題あり!)、
スカーペッタの所属も転々とし、
ベントンの関係もとうとう結婚までこぎ着けた。
こういうことには実に感慨深いものがあります。
今回も、非常に現代を反映した問題がテーマとなっていまして、
それはインターネットなのです。
"ゴッサム・ガッチャ"というインターネット・サイトに載せられたスカーペッタの中傷記事。
これがのちに事件にも大きく関わってきます。
恋人殺しの疑惑がかかる青年から、スカーペッタに指名がかかります。
「僕は殺していない。自分の理解者にしか話はしない。」
この殺された彼女のパソコンを調べると、
頻繁にスカーペッタとメールのやりとりをしていた形跡がある。
しかも、そのスカーペッタからのメール文に次第に悪意が感じられる様になっている。
しかし、そのメール文も彼女のことも、スカーペッタには全く身に覚えのないこと。
誰かがスカーペッタを陥れようとしたとしか思えないのだが・・・。
ここではICTの天才ルーシーがいて、とても心強い。
削除済みのファイルからもとの文章を復元するなんて朝飯前。
メールの差出人を特定してゆくなどというプロセスは、私など読んでさえよくわかりません・・・。
こういうITがらみの事件は、実際にありそうでなんだかコワイですね。
全くの他人がいつの間にか自分になりすます・・・。
あずかり知らないところで、自分が陥れられる・・・。
ネット上の顔はどのようにでも繕える。
こういうリスクの可能性もあるということですね。
さて、そうして特定されてゆく、意外な真犯人とは???
・・・と、いつものように事件の行方も興味深いのですが、
さらにスカーペッタを取り巻く人物関係から目が離せません。
前回、長年スカーペッタの相棒というか助手的存在であったピート・マリーノが
とんでもない暴挙に出ました。
この巻では、それが後を引いてずっと音信不通であった彼らが、
この事件に関わることにより再会することになります。
本人たちも周りも、非常にナーバスになりながら、ぎこちなく以前の関係を取り戻してゆく。
でも、なんだかほっとします。
それで今更気づいたのですが、たぶん私、マリーノが好きなんですよね。
この物語のスカーペッタも、ベントンも、ルーシーもかっこよすぎます。
ルーシーの素行は若干問題ありですが、頭脳的にも肉体的にも理想的なのが彼ら。
ところがマリーノはかっこわるいのです。
飲み過ぎ食べ過ぎ、女房には逃げられ・・・。
ただし、事件の捜査は真摯でキレもある。
だからこそここまでスカーペッタと共にやってこられたわけですが。
こんなところが妙に親しみやすくて、憎めない。
だから、この巻できちんと復帰したマリーノにほっと胸をなでおろすのでした。
また、結婚によって逆に距離が開いてしまった感のあるスカーペッタとベントンの今後は・・・?
まだまだこれからも目が離せそうもありません。
満足度★★★★★