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「フィッシュストーリー」 伊坂幸太郎

2010年01月07日 | 本(その他)
フィッシュストーリー (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社

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4篇からなる短編集です。
どれもおもしろいのですが、
やはりこの表題となっているフィッシュストーリーが最高でした。


「フィッシュストーリー」というのは、ほらばなしのことですね。
誰しもつった魚のことは誇張して言うもの・・・。
「ビッグ・フィッシュ」という映画もありましたが、そちらもおもしろいですよ~。


さて、これは、その映画とは全く別のストーリー。
いくつかの章立てがしてありまして、

二十数年前

現在

三十数年前

十年後

という風に、時系列が正しく並んでいないのです。
そこがこの作品のおもしろいところ。
だから、話はそれぞれ独立していて、一見脈絡がないように思える。
でも、最後まで読むと、
ああ、そういう話だったのかと、
ジグゾーパズルが完成したみたいに、最後に全体像を見渡すことができる。
これがなんだか快感なのです。
ストーリーとしては、たとえば「風が吹けば桶屋が儲かる」
そんな風。

ある売れないロックグループが、解散寸前にレコーディングをする。
その中の一曲、なんと数十秒もの無音部分ができてしまったのだけれど、
どうせ売れないし、解散だから・・・と、
やけくそのようにそのまま発売されてしまいました。
確かに全然売れなかった曲なのですが、
その曲が後々地球を救うことに貢献するという、これは壮大なお話なのです。
そんなことある~? 
なんて野暮なことはいいっこなし。
だって、これはフィッシュストーリーなんですから。

やはり、伊坂幸太郎。
短編でもあなどれませんねー。

満足度★★★★☆