映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

今度は愛妻家

2010年02月02日 | 映画(か行)
探しものは何ですか・・・



            * * * * * * * *

かつて人気カメラマンだった俊介(豊川悦司)。
今は仕事もせずだらだらと毎日を過ごしている。
妻さくら(薬師丸ひろ子)が、体にいいというニンジン茶やら無農薬野菜やらを押しつけるのがうっとうしい。
その妻があるとき不意に旅行に行くと出かけたまま、何日も戻らないのだが・・・。

これは子供がいない結婚10年目の夫婦。
それで、倦怠感で崩壊寸前の夫婦の再生の物語かと思ったのですよね。
しかし、なんとこれは・・・!

妻の自由を求めた旅立ちの物語なのか。
否。

取り残された夫の自滅の物語なのか。
否。

意外な展開を是非確かめてみてください。
真相が見えたところからがまた、心が揺さぶられてしまうのです・・・!



毎日接していてうっとうしいと思っていたとしても、
失って初めてその大切さに気づく、ということはあります。
その価値に気づかず、大切に出来なかったことへの後悔。
あるべき物がそこにない喪失感。
切ないですね。
邪険にされながらも、ほんわか包み込むような・・・そんな中でも寂しさをにじませる妻。
薬師丸ひろ子がいい味を出していました。



この作品は、人気の舞台演劇の映画化です。
だから、その面影が残っていて、この夫婦の茶の間のシーンがほとんど。
そこにいろいろな人が出入りして会話でストーリーが進んで行きます。 
あの、おかまサンのセリフは完全に演劇調でしたね。
同じセリフでも、映画と舞台は結構違うんだなあと、改めて感じました。

この2人がよくぼそぼそと口ずさんでいたこの歌・・・
“探しものは何ですか   たん た たん”
“見つけにくいものですか    たん た たん”・・・・・

確かに、愛情は目では見えません。
あるときはいくら探しても見つからないのに、
なくなって、そのぽっかり空いた穴によって初めてその存在がわかる。
不思議なものですね。

これでエンディングテーマが
本物の井上陽水の曲(「夢の中へ」ではないのですが)というのがまた、心憎いです。
思わず聞き惚れて、皆さんほとんど最後まで席を立たずにいました・・・。



で、私もしばらく耳についてしまって・・・

“探しものは何ですか  たん た たん”
“見つけにくいものですか  たん た たん”・・・・・

2009年/日本/131分
監督:行定勲
出演:豊川悦司、薬師丸ひろ子、水川あさみ、濱田岳、津田寛治

「今度は愛妻家」