映画と本の『たんぽぽ館』

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インビクタス/負けざる者たち

2010年02月08日 | クリント・イーストウッド
事実に裏打ちされた力強い感動作



              * * * * * * * *

南アフリカ共和国。
ネルソン・マンデラ氏の大統領就任まもない頃の実話です。
マンデラ氏は27年間の獄中生活を経て大統領となった方。
その辺のところは、「マンデラの名もなき看守」という映画に詳しいので、
是非こちらも見てみるといいと思います。
                  →「マンデラの名もなき看守」


マンデラ大統領(モーガン・フリーマン)は、
長年のアパルトヘイトですっかり二分されてしまった白人と黒人の心を何とか一つにしたいと思い、
ワールドカップのラグビーに注目しました。
当時南アではラグビーはほとんど白人のスポーツ。
黒人はむしろサッカーに夢中。
ラグビーの試合では、黒人たちは白人ばかりの自国のチームではなく、
相手国のチームを応援するしまつ。
その上、弱くてちっとも勝てないこのチーム、解散寸前のところだったのですが。
大統領は、チームのキャプテン、ピナール(マット・デイモン)をお茶に招き、
不屈の魂についての話をするのです。

祖国を一つにしたい。
祖国のために勝ってほしい。




1995年、地元南アフリカで開催されたラグビーワールドカップ。
チームは奇跡の様に勝ち続け、ついに決勝戦、対ニュージーランド戦の幕が開きます。


スポーツは確かに、皆の心を一つにしますね。
わが北海道は、もともと巨人ファンがとても多かったのですが、
昨今は日ハムファンであふれています。
地元のチームを応援するとき、皆の心は一つ。
オリンピックともなれば、祝日にも掲げない日の丸がやけに目にしみる・・・。

そんなふうで、いつしか黒人も白人も一つになって、自国のチームを応援している。
まったく、イーストウッド監督には、やられます。
嫌が応にも、ぐいぐいと感動の海に私たちを引きずりこんでゆく。
でも、これは監督の手腕もあるのでしょうけれど、
元々の実話自体に力があるんですね。
大統領となったマンデラは、白人を見返そうとしたり復讐したりもせず、
「和解と赦し」を周囲の黒人たちにも求めたのです。
ネルソン・マンデラ。
この方の祖国に対する思い。
そのビジョンの確かさが、周囲の人の共感を呼び、
強いリーダーシップに結びついたのだと思います。



ピナールがマンデラの約30年を過ごした独房を見学し、中に入ってみるシーンがありますね。
この中でマンデラは決して屈することなく、信念を持ち続けた。
なんと強い魂でしょう。
ピナールの心にはもう白人だの黒人だのという区別はありません。
ただ人間として、マンデラを尊敬せずにいられない。
モーガン・フリーマンが、これまたはまり役で、すばらしかった。



大統領の警備班の様子も、よかったですね。
当然黒人だけのつもりだったのに、
大統領の希望で、前大統領についていた白人の警備要員も加わることになった。
反目する彼ら。
けれども、彼らも次第にお互い変わってゆくのです。
大統領の起こした波紋がどんどん、周囲に伝わって広がってゆく。
そういうところがまた、見る者の胸を熱くしていくんですよ。
決してスポーツのおかげばかりでもないんですね。

それからラグビーって、私もほとんど試合を見たことがなかったのですが、
これって球技ではなく格闘技ですね!!
ぐいぐいと力と力で戦う。
この迫力も映画のなせる技か・・・。
なんだか、圧倒されてしまいました。

アパルトヘイトを知らない人も、ラグビーを知らない人も、大丈夫。
理屈なく感動。ただそれのみ。
・・・しかし、わかっていればなお感動、です!!

映画 インビクタス/負けざる者たち 予告



2009年/アメリカ/134分
監督:クリント・イーストウッド
出演:モーガン・フリーマン、マット・デイモン、トニー・キゴロギ、スコット・イーストウッド