映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

アマデウス

2010年02月06日 | 映画(あ行)
単なる伝記を超える奥深く豪華な作品
★何度見てもすごい50本より★

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ウォルフガング・アマデウス・モーツァルトの半生を描きます。
これを語るのは、彼を妬むオーストリア宮廷音楽家サリエリ。

言うまでもなく、モーツァルトは子供の頃から神童と呼ばれた音楽の天才。
サリエリはこの才能を天に与えられたモーツァルトを、ひどく憎むのです。

“なぜあんな軽薄で女にも金にもだらしないヤツが、神からそのような恵みを受けるのか。”
“なぜ、普段から品行方正を心がけ、女にも触れたことがない、私ではなく・・・。”

このサリエリの陰の策略で、
宮廷では恵まれず、貧窮生活を余儀なくされたモーツァルト。
皮肉なことに、モーツァルトの音楽性の一番の理解者であり熱愛者がこのサリエリであり、
だからこそ彼は苦しんでしまうのです。
サリエリは奇跡のような才能をモーツァルトに与えた神をも否定。
結果的に彼がモーツァルトを殺したようなもの・・・
その後悔に苛まれ次第に狂気に陥ってゆく。

ただ単に、モーツァルトの業績を並べるのではなく、
この語り手を用意したことにより、物語がいっそう深みを増しているのです。
宮廷ではもてはやされ、オペラも愛されたけれど、
老境に入ったサリエリや彼の作曲した曲を誰も記憶にとどめていない。

一方、不遇に終わったモーツァルトは、
現在に至ってなお世界中に愛され、その名を知らぬものはない。
その価値は歴史が証明している・・・ということですね。
今や温室や牛舎などでもモーツァルトを流しているといいますよね。
その旋律、ハーモニーには確かに神から与えられた何かが宿っている様な気がします。
今更ながら、すごいことです・・・。


それにしても、天才と放蕩生活。
なんだか太宰を思い出してしまいました。
天は二物を与えず・・・。
神はやはりバランスを考えているらしい・・・。

このしっかりしたストーリーがあって、
そしてシックな色調と、言わずもがなのすばらしいモーツァルトの音楽の数々、
これらに彩られ、実に奥行き深いきらびやかな作品となっています。
これが「何度見てもすごい50本」のうちの一つ、というのには意義の申し立てようがありません。
是非一度は見たいオススメ作。

いつも深刻なサリエリなのですが、甘いもの好きなのがちょっと微笑ましいですね。

1984年/アメリカ/160分
監督:ミロス・フォアマン
原作・脚本:ピーター・シェイファー
出演:F・マーレイ・エイブラハム、トム・ハルス、エリザベス・ベリッジ