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「ルピナス探偵団の当惑」 津原泰水

2010年02月21日 | 本(ミステリ)
博学のオトボケ探偵

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ルピナス探偵団の当惑 (創元推理文庫)
津原 泰水
東京創元社

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私には初めての作家です。
・・・というか、全然知らなかった方なのですが、
1989年津原やすみ名義でデビュー。
少女小説を多く手がけていたようですが、
その後怪奇・幻想小説、恋愛モノや青春モノなど、
ジャンルにとらわれない活躍をしているとのこと。
それからすると、このような推理小説はむしろやや異色なのかもしれませんが、
でもその色濃く、つまりは学園推理モノとなっています。

主人公は、高校生吾魚彩子。
人よりやや直感力は優れているようですが、まあ、普通の女の子。
そのあこがれの君、祀島(しじま)達彦。
頭脳明晰、とんでもなく博識。
そして彩子の友人、美少女摩耶とボーイッシュなキリエ。
それからとても刑事とは思えないがさつな彩子の姉、不二子。

主にこのメンバーが ワイワイガヤガヤやるうちに事件に遭遇し、
そして事件を解決していきます。
雰囲気としては、これはコナン君なんです!!

とくに2話目。
みんなで温泉に行くはずが、何故か山奥の洋館にたどり着く。
道を間違えたことに気づいても、もう雪崩で後戻りできない。
雪の山荘で起こる殺人事件・・・。
・・・という全くベタな展開ながら、この洋館の怪しい雰囲気は綾辻行人の「館」なみ。
いやあ、なかなかのものです。

特に、この祀島くん。
この本には3話が収められていますが、
一話目は単にアドバイスを与えるくらい。
2話めは危うく推理をミスリードする3枚目?になりかけつつも、無事解決。
そして3話目ではもう堂々たる名探偵。
ということで、どんどん進化していくのです。
また、変なことに非常に詳しく推理の冴えも抜群ながら、オンナノコの気持ちにはてんで無頓着。
むしろぼーっとした感じさえ受ける
・・・というこのキャラ、すっかり気に入ってしまいました。

ユーモアにあふれ、個性たっぷりの登場人物もそれぞれ魅力的。
楽しめる本格ミステリです。
また謎は謎としてスリルある展開もなかなかのもの。
ちょっと思わぬ拾いモノをしたような、得した気分ですね。

満足度★★★★☆