映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

羊たちの沈黙

2010年05月05日 | 映画(は行)
狂気と正常の境界は?
~何度見てもすごい50本より~



            * * * * * * * *

言わずともしれている、サイコ・サスペンスの名作ですが、
これもそういえばテレビの洋画劇場で見たくらいで、
じっくり見たことが無かったような・・・。
ということで、見ました。

クラリスは将来を有望視されているFBIアカデミーの訓練生。
ある連続殺人事件のてがかりを得るため、
現在収監中の元精神科医、レクター博士に面会に行きます。
この男、一見知的で礼儀正しげではあるのだけれど、
実は残忍な人食い殺人気。
・・・目が怖い。
クラリスとの面会は、むろん頑丈な鉄格子と強化ガラス越しではあるのだけれど、
にもかかわらず、いかにも何か起こりそうな危険な雰囲気。
この緊迫感。
ハラハラしますねえ。
現在起こっているのは連続猟奇殺人事件。
太った女性ばかりが狙われ、何故か皮膚がはぎ取られている。
クラリスに興味を持ったレクターは、
この事件を解くヒントをクラリスに与えます。

このレクターも、新たな連続殺人鬼も、つまりは“ 狂気”なのですよね。
通常では理解しがたいこの行動。
しかし、このレクターの冷静な頭脳のさえ。
状況の分析力。
こんな優秀な人物が何故・・・???
と思うにつけ、狂気と正常の境界がわからなくなってきます。
このストーリーの怖さはここにあります。


「羊たちの沈黙」とは、クラリスの子供の頃のトラウマとなった出来事に由来します。
彼女は、牧場で子羊のの現場を見てしまうのです。
子羊はただ固まって悲痛な鳴き声を上げるだけ。
柵を開け放っても逃げようとしない。
ここでは羊は「迷える子羊」という宗教上のヒトを指す含みもあるのですね。
サイコキラーの手にかかる犠牲者たちはつまり、ただ沈黙する羊だ・・・。
おびえるだけでただ無力・・・。

レクターは、誘拐殺人犯の心理をある程度分析して見せるのですが、
ではさて、何故彼自身は人食いなのか。
これはどういう真理・・・?
というところはこの作品では語られません。
その答えは、後続する映画を待て、ということですね。
それにしても、今見ても強烈なインパクトのある一作でした。

羊たちの沈黙 (特別編) [DVD]
ジョディ・フォスター,アンソニー・ホプキンス,スコット・グレン,テッド・レヴィン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン



1991年/アメリカ/118分
監督:ジョナサン・デミ
原作:トマス・ハリス
出演:ジョディ・フォスター、アンソニー・ポプキンス、スコット・グレン、テッド・レビン