映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「鹿男あをによし」 万城目学

2010年05月30日 | 本(SF・ファンタジー)
「さあ、神無月だ―――出番だよ、先生」

鹿男あをによし (幻冬舎文庫)
万城目 学
幻冬舎


         * * * * * * * *

TVドラマにもなった人気作ですね。
題名からもすぐわかる、これは奈良が舞台。
大学の研究室を追われた「おれ」。
やむなく教授のすすめに従って、奈良の女子高に教師として赴任。
ところが突然、公園で鹿が中年男の声で話しかけてきた!!

「さあ、神無月だ―――出番だよ、先生」

鹿がしゃべるというだけでも驚きだし、
突然出番だよといわれても何が何だかわからない。
これは、奈良で太古の昔から引き継がれている儀式だというのですが・・・。

さすが奈良。
そのそもそもの発祥の話というのがすばらしく歴史的ロマンに満ちていて、面白いですね。
でも、この先生、早速お役目に失敗して、なんと顔が鹿になってしまうのです。
これは他の人から見てもわからない。
自分にだけわかるのですが、鏡に映った顔が鹿。
うーん、これは悲惨だ・・・。
それだけならまだしも、任務を遂げられなければ、
大変なことが起こり国が滅びるという・・・。
さあ、どうなる!!
鹿が求める「サンカク」とは何なのか。
彼はそれを無事に見つけ出して鹿に渡すことができるのか。
そして、彼は無事に人間の顔に戻れるのか。
更には、この国は守られるのか。


さて、彼を取り巻く人たちもユニークなんですね。
何かと反抗的な少女、堀田。
しかし、彼女にも何か秘密が・・・。
話のわかる教頭リチャード。
・・・別に英国人ではありませんよ。
あだ名ですね。
同僚の、いつもかりんとうをくれる藤原くん。
他校の麗しい教師、マドンナ。

このあたりの人物配置は「坊ちゃん」を意識しているようですが、
なるほど、ムダが無くて、ラストも納得。
いやいや始めた教師も、なんとか様になってきて、最後の重大な決断も男らしい! 
この主人公はじわじわと魅力がでてきますね・・・。

よく出来たストーリーでした。


奈良・・・いいですね。
私はひどく昔に修学旅行で行ったきりです。
鹿にあいたくなってしまいました。
鹿せんべいをあげたい!

満足度★★★★☆