映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「オー!ファーザー」 伊坂幸太郎

2010年06月03日 | 本(その他)
最後のワンピースで完成するパズル

オー!ファーザー
伊坂 幸太郎
新潮社


            * * * * * * * *

高校生由紀夫の家は、母一人子一人に、父親が4人!?!
そう、四人の父親が同居しているのです。
どうも同時に母が四人と付き合っていて由紀夫を妊娠。
話し合いの末、4人が全員「父親」になることとして、「結婚」したのだとか・・・。
驚いてしまう設定ですが、
これがまたそれぞれに個性的で魅力的な男性方でして・・・。
どれも捨てがたかった、お母さんの気持ちはわからなくもないですね・・・。


その四人とは・・・
鷹 賭け事大好き、裏社会のことも訳知り
葵 女好き。 女性に声をかけるのが礼儀だと思っている
悟 知的冷静な頭脳派
勲 体育会系熱血教師

この4人がせっせと由紀夫を育て、教育したものだから、
由紀夫はそれぞれの分野に秀でるカッコイイ男子に成長している!
このストーリー中は、母親は出張でほとんどいなくて、
由紀夫と4人の父親中心に話が進みます。

由紀夫と中学時代の友人鱒二。
不登校の小宮山。
押しかけ友人多恵子。
県知事の選挙。
裏社会のドン、富田林。
級友の殿様。
テレビのクイズ番組。
手旗信号。

いろいろなピースがちりばめられながら、ストーリーが進んでいき、
ついには予想もつかない事件が!!
でも、それも、最後にはすべてぴたっと収まるところに収まっていく。
伏線の妙。
まるでジグソーパズルの最後の一枚で、絵が完成したような爽快感。
これぞ、伊坂ワールドですね。
堪能しました。


こんな一節があります。

コドモは、実は大人社会から守られている。
しかしそれをわからずに、教師に逆らって、
大人になったような気になっているコドモは愚かである。


由紀夫は何をやっても人より秀でているので、若干こんな気持ちもあったのですね。
けれどある事件があって、この言葉をつくづく思い知ることになる。
そうなんですよね。
大人社会を批判し、逆らうのがカッコイイと思っている若者。
実は大人社会そのものに守られていることも知らずにそれをするのは、
コドモであることの証明みたいなもんですね。
身にしみます。

満足度★★★★☆