映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「告白」 湊かなえ 

2010年06月18日 | 本(ミステリ)
壊れ行く人間社会・・・

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)
湊 かなえ
双葉社


            * * * * * * * *

2009年本屋大賞1位受賞作品。
その他の各賞も総なめのこの本。
書店店頭にあまりにも多く並べられたその本を逆に敬遠してしまって、
読んでいませんでした。
この度、文庫となったので手を出しやすかったわけです。


我が子を校内で亡くした中学校の女性教師が、ホームルームで「告白」するシーンからこの物語は始まります。

「愛美は死にました。しかし事故ではありません。このクラスの生徒に殺されたのです」

ここで、2人の男子生徒が犯人として名指しされるのですが、
語り手が「級友」、「犯人」「犯人の家族」と語り継がれる中、
事件の真相と少年たちの心の闇が次第に浮かび上がってきます。


現実にあった様々な少年犯罪、
連続殺人事件であったり、親族殺人であったり、
そのようなことを彷彿とさせます。
そのような犯罪を犯す少年は、頭がよく、大人社会をバカにしているところがあるようですが、
そうした心理をうまく表していると思います。

「今のあなたが生きているのは誰のおかげなのでしょう。
そんなこともわからずに少し自分が勉強ができるからといって
自分こそが選ばれた人間であると思っているあなたこそが、
一番何もわかっていない人間、
あなたが言うところの馬鹿なのではないでしょうか。」

と、こんな終盤のセリフが一番核心をついていると思いました。


このようにストーリーとしては確かに読ませられるのですが、
私としてはあまり好きではありません。
あまりにも簡単に「死」があります。
HIV、いじめ、不登校、マザーコンプレックス、子離れできない母
・・・ちりばめられた材料がすべて負のアイテム。
かすかにあるように思えた「恋」も、嘘でした。
どこかに「愛」が欲しかったですね。
あるいは「救い」が。
まあ、これは個人の好みの問題。
ただ、これだけの評判作というのは、
こういうのが好きな方が多いということなのでしょうねえ・・・。
ついて行けない自分に年を感じてしまう・・・。

今映画の方も公開中で
これがまた、ずいぶん評判はいいようですね。
評論家の評価もよし。
しかし、私はこのテーマ自体になじめなさそうなので
見ないで終わりそうです。

満足度 ★★★☆☆