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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ちょんまげぷりん」 荒木源 

2010年08月02日 | 本(その他)
江戸時代からタイムスリップしてきたお侍が、プリン作り?!

ちょんまげぷりん (小学館文庫)
荒木 源
小学館


          * * * * * * * *

意味不明ですが、思わず微笑んでしまいそうなかわいいこの題名。
江戸時代のお侍が現代にタイムスリップ。
何とも興味深い内容に惹かれて読んでみました。
現代から過去へのタイムスリップは結構ありますね。
でも逆パターンはそれほど多くはない。


きっかけはごく何気ないのです。
シングルマザー遊佐ひろ子が、
たまたま家の近所で困っているお侍の格好をした謎の男を気の毒に思い、
家に置くことになってしまった。
それだけでお人好しの彼女の性格がわかる気がしますね。
そのお侍は木島安兵衛。
どう見てもそのチョンマゲは本物。
信じられないけれど、本当に江戸時代からタイムスリップして来たとしか思えない。

家においてもらって恩義を感じた安兵衛は、
ひろ子が仕事に出ている間、家事をすることに。
しかし、その仕事は半端なものではありません。
もちろん初めてのことで、初めのうちはぎこちなかったのですが、
慣れてくれば掃除、洗濯、そして料理、すべて完璧。
仕事を持つひろ子にとっては理想の「主夫」。
おまけに保育園児の息子友也もすっかりなついて、
寂しさからか情緒不安定だった子が安定してくる。

そんなある日、安兵衛はテレビの手作りケーキコンテストに出演するのですが、見事優勝。
そのすばらしいお菓子作りの腕と特異なコメントで、話題となり、
あれよあれよという間に大人気。
お金も入るし、超多忙で、とうとうひろ子の家を出ることに。

この辺の展開がスピーディーで目が離せなくて、
私は止められず寝不足になってしまいました・・・。

ひろ子はひろ子で、
安兵衛が家事を引き受けてくれることで安心して仕事に打ちこめるようになり、
出世をして、大事な仕事を任され、こちらも超多忙となっていくのです。

結局、置き去りにされるのは友也くん。
でも、ひろ子はこんな状態は良くないとちゃんと気づく。
けれども、生き甲斐を見つけ超多忙な安兵衛とは気持ちがすれ違い・・・


さてさて、どうなりますか。
実に読ませるストーリーです。

では何故に今、江戸時代の侍なのか。
安兵衛が語る言葉には、
現代人が忘れてしまった、根源的に大事なものが多々あるんですね。

「家事に心をもっぱらにせず、
アレもしたいこれもしたいと、
夢みたいなことばかり考えてえねるぎーを浪費しておるらしいのは看過できぬ。
人には分というものがござる。
分をわきまえて生きるのを、まことの人の道と申す。」


一見男尊女卑かとも思える言葉でもあるのですが、
つまりは自分に与えられた役割を全うせよと、そう言っているわけです。
子供に対しても、
きちんとお手伝いはさせるし、わがままはダメ。
いいことはいい。
ダメなものはダメ。
実にきっぱりとしている。
ああ・・・うちにも1人こんな人が迷い込んで来ないかしらん・・・。


最後にはちゃんとタイムスリップものらしいオチもあります。
変な恋愛ものに進展しないところがまた、爽やかで
私としてはポイント高いです。

錦戸亮主演、中村義洋監督による映画も公開中。
あんまり気に入ったので、私はきっと見に行くことになりそう。

満足度★★★★★