「静」が作り出す緊張感とユーモア・・・そのままの自分でつながり合う

* * * * * * * *
「かもめ食堂」、「めがね」の荻上直子監督作品。
日本作品なのにすべて英語で字幕付きという異色作ですが、
内容は間違いなく荻上作品です。
英語になるとますます感じますが、
ハリウッド作品が「動」とすれば荻上作品は「静」ですね。
こういう作品をあちらの方がどう見るのか、きいてみたい気がします。
この作品、すべてカナダのトロントで撮影されたそうですが、物語設定はアメリカです。
母親が亡くなったばかりの兄弟、妹。
長男モーリーは、引きこもりのピアニスト。
次男レイは、ロボット型プラモデルおたく。
末の妹女子大生のリサは勝ち気でいばりんぼ。
そして、ここになんともう一人、異質な日本人のバーチャン。
それがもたいまさこです。
このバーチャン、3人のお母さんが亡くなる寸前に日本から呼び寄せて
一緒に住み始めたのですが、英語が全く話せない。
お母さんが亡くなってからは、ほとんど自室にこもりっきりでろくに食事もしない。
気にはなるけれど、言葉も通じず、どうしていいかわからない3人。
もたいまさこさん、ほんとに一言も話さないんですよ。
最後の大事な場面の一言を除いては。
3人が話しかけても無言で、かすかな動きがあるくらい。
この静けさと間合いに妙な緊張感があります。
これぞ日本の「静」の世界?
こんな得体の知れない人と一緒に暮らすのはイヤだと思ってしまうレイ。
彼は基本的に他人と深く関わらない主義なのです。
しかし、バーチャンが長いトイレの後、
いつも深いため息をつくのが不思議で、気になってしようがない。
この作品の題名「トイレット」とは、
すなわち異文化コミュニケーションを表しているのでした。
異文化といえば結局、この家にいる4人が皆全く別々の方を向いていて、
初めのうちはまとまりも何もない。
まさに異文化の局地。
けれども、おのおの別に変わらなくてもいい。
そのままで認め合いながら、お互いがつながっていくのです。
そしてそのことがまた自分への化学変化となって返ってくる。

随所にちりばめられた静かなユーモアと、
さらりとした中にある実はほんのり温かい友愛。
これ見よがしでないところが、やはり荻上流。
モーリーが長い引きこもりを破って、わざわざ買ってきた布で作りたかったものとは?
これも見物ですよ。
そして、この作品中のギョーザがまた、
例によってすごーくおいしそうで、食べたくなってしまいます。
家族みんなで具を包んで焼くんですが、
我が家でもそういえば、子供たちが小さい頃はそんなこともしていたなあ、
と思い出しました。


この作品、『ベスト・キッド』の後に続けてみたのです。
これは、つなげてみるとあまりにも地味かも知れないと思ったのですが、
いえいえ。
「面白さ」にもいろいろとあるものですね。
どちらもそれぞれに堪能し、大満足できた一日でした。
2010年/日本/109分
監督・脚本:荻上直子
出演:アレックス・ハウス、タチアナ・マズラニー、デイヴィッド・レンドル、サチ・パーカー、もたいまさこ

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「かもめ食堂」、「めがね」の荻上直子監督作品。
日本作品なのにすべて英語で字幕付きという異色作ですが、
内容は間違いなく荻上作品です。
英語になるとますます感じますが、
ハリウッド作品が「動」とすれば荻上作品は「静」ですね。
こういう作品をあちらの方がどう見るのか、きいてみたい気がします。
この作品、すべてカナダのトロントで撮影されたそうですが、物語設定はアメリカです。
母親が亡くなったばかりの兄弟、妹。
長男モーリーは、引きこもりのピアニスト。
次男レイは、ロボット型プラモデルおたく。
末の妹女子大生のリサは勝ち気でいばりんぼ。
そして、ここになんともう一人、異質な日本人のバーチャン。
それがもたいまさこです。
このバーチャン、3人のお母さんが亡くなる寸前に日本から呼び寄せて
一緒に住み始めたのですが、英語が全く話せない。
お母さんが亡くなってからは、ほとんど自室にこもりっきりでろくに食事もしない。
気にはなるけれど、言葉も通じず、どうしていいかわからない3人。
もたいまさこさん、ほんとに一言も話さないんですよ。
最後の大事な場面の一言を除いては。
3人が話しかけても無言で、かすかな動きがあるくらい。
この静けさと間合いに妙な緊張感があります。
これぞ日本の「静」の世界?
こんな得体の知れない人と一緒に暮らすのはイヤだと思ってしまうレイ。
彼は基本的に他人と深く関わらない主義なのです。
しかし、バーチャンが長いトイレの後、
いつも深いため息をつくのが不思議で、気になってしようがない。
この作品の題名「トイレット」とは、
すなわち異文化コミュニケーションを表しているのでした。
異文化といえば結局、この家にいる4人が皆全く別々の方を向いていて、
初めのうちはまとまりも何もない。
まさに異文化の局地。
けれども、おのおの別に変わらなくてもいい。
そのままで認め合いながら、お互いがつながっていくのです。
そしてそのことがまた自分への化学変化となって返ってくる。

随所にちりばめられた静かなユーモアと、
さらりとした中にある実はほんのり温かい友愛。
これ見よがしでないところが、やはり荻上流。
モーリーが長い引きこもりを破って、わざわざ買ってきた布で作りたかったものとは?
これも見物ですよ。
そして、この作品中のギョーザがまた、
例によってすごーくおいしそうで、食べたくなってしまいます。
家族みんなで具を包んで焼くんですが、
我が家でもそういえば、子供たちが小さい頃はそんなこともしていたなあ、
と思い出しました。


この作品、『ベスト・キッド』の後に続けてみたのです。
これは、つなげてみるとあまりにも地味かも知れないと思ったのですが、
いえいえ。
「面白さ」にもいろいろとあるものですね。
どちらもそれぞれに堪能し、大満足できた一日でした。
2010年/日本/109分
監督・脚本:荻上直子
出演:アレックス・ハウス、タチアナ・マズラニー、デイヴィッド・レンドル、サチ・パーカー、もたいまさこ