映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「桐畑家の縁談」中島京子

2010年09月23日 | 本(その他)
ある日突然妹が結婚宣言した相手とは?

桐畑家の縁談 (集英社文庫)
中島 京子
集英社


            * * * * * * * *

先日読んだ「小さなおうち」で、俄然興味が出てきた中島京子さん。
各出版社も、売り込みにソツがありませんね! 
つられて買ってしまいました。


この作品、期せずして先日読んだ「そんなはずない」と設定がよく似ている。
(朝倉かすみ著「そんなはずない」は私にはどうにも好きになれず、
ブログ掲載は見合わせました。
そのうちボツ特集でもやれば載るかも・・・)

二人の姉妹のことが描かれていて、しかも飛んでるのは妹の方。
姉はそんな妹を見て、自分の人生や愛を見つめ直す、という具合。
前者と比べてこの作品はとても入り込みやすくて、
やはり力量の差を感じてしまいます・・・。


ある日突然妹が結婚宣言した相手は、
中華料理店で働く台湾の青年、ウー・ミンゾン。
ちょっと珍しい設定ですが、確かにこれが好青年だ。
日本語は怪しいですが。
この妹、佳子は、引っ込み思案で奥手・・・だったはずなのですが、
いつの間にやら姉露子よりもくっきりとした生き方を身につけている。
日本語学校の事務という堅実でぴったりの仕事をさっさと見つけてくるし、
始めのボーイフレンドはサミュエル・ジョンソンという黒人で、
その次がこの台湾青年。
しかも突然の結婚宣言。
我が道を行き、いい出したらきかない佳子さんのこと。
母親はもうすっかりあきらめてしまっているし、
父、桐畑氏も本当は反対なんだけれども言い出せない。
そんな家族の揺れる感情がよく表されていますね。


実はこの佳子さん、我が家の次女に何だか似ていて、
人ごとではない気がしてしまったのです。
そうです、我が家も二人姉妹・・・。


現在無職で、結婚する気がなくもなさそうな彼氏もいる姉露子は、
思いにまっしぐらな妹のことがまぶしい。
それで我が身を振り返ってしまうわけですが・・・。
仕事なのか、結婚なのか。
中途半端で気持ちが定まりませんね。
27歳。
これくらいの年齢だとそうでしょうね。
このストーリーでは、露子さんが
あえてどちらにもぎらぎらした気持ちにならないのがいいのです。
結局自分は自分、妹は妹。
姉妹でありながら、性格・持ち味はそれぞれということですよね。
また、結婚がすべてではないし、ゴールでも生きる目標でもない。
そういう姉が、妹を見守るというこの風景、
ほんのりとしたユーモアとぬくもり。
いい感じです。


満足度★★★☆☆