映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

(500)日のサマー

2010年01月12日 | 映画(か行)
時には花咲かない恋もある・・・



* * * * * * * *

運命的出会いとか、ドラマチックな恋、
そういうものを信じ夢見ているトム(ジョセフ・ゴードン=レビット)。
彼は社長秘書のサマー(ズーイー・デシャネル)に一目惚れ。
これはこの2人の500日間の恋の物語。
・・・ところがこの作品、
冒頭でナレーターが
「最初に断っておくが、これはラブストーリーではない」と、
きっぱり宣言するのです。
・・・さてどうなりますことやら。



トムに比べて、サマーの方は現実的。
トムの熱意にほだされて、つきあい始めるものの
うっとりロマンチックにはなれないサマー。
ムードに流されないサマーが大人なのか。
ロマンチックを夢見るトムが子供なのか。


500日としっかりカウントされているのを見ても解るとおり、
これは終わりのある恋の物語。
トムの視点で語られるのですが、
私たちはトムと共に
サマーに対して何かもどかしい思いを味わうことになるでしょう。
映画のラブストーリーは、
思いが通じるハッピーエンドが約束されているものですが、
実生活では、そうとは限らない。
いや、うまくいくことの方がまれかもしれません。
トムの苦い思いがリアルに伝わってきます。
トムはグリーティングカードの制作会社に勤めているのですが、
本当は建築家になりたかった。
このサマーとの出会いと別れを通して、
本当に自分のやりたいことを見つめ直し、再出発につなげるのです。
だからこれはこれでいい。
こうして彼は、現実をしっかり見つめることの出来る大人の男に近づいていくんですよね。



さて、この作品の作りがなかなかおしゃれです。
場面が普通に時系列通りでなく、シャッフルされて映し出されます。
つまりこれはトムの心の揺れを中心に描かれている。
トムの理想の思い込みと現実が左右の画面で同時に映し出されたり、
いきなり背景がモノクロのイラストになったり。
それがけっして鼻につかず、
都会的センスが感じられる小気味のよい作品です。




余計なことではありますが・・・
映画を見る限りではトムは十分にステキなんですけどね。
サマーがのめり込めなかったのは何故でしょう?
本当にやりたいことがありながら現状に甘えてしまっているトムが物足りなかったとか・・・・。
運命の恋にあこがれるなんて、子供っぽいと思ったのか・・・。
女性には現実的なところもありますからね・・・。
でも、そこまで現実的になっちゃうというのには
相当の修羅場を経ているか、かなりの年齢か・・・。
いえいえ、単に好みに合わなかっただけ、ということにしておきましょう。
ビビビと来るものがなかった、と。
う~ん、かなり贅沢。
ちょっとナイーブそうな彼、私は好きだけどなあ・・・。
(私が好きでも、しょうがないんだってば!!)


監督:マーク・ウェブ
出演:ジョセフ・ゴードン=レビット、ズーイー・デシャネル、ジェフリー・エアンド、クロエ・グレース・モレッツ

神様

2010年01月11日 | 本(その他)
神様 (中公文庫)
川上 弘美
中央公論新社

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川上弘美デビュー作「神様」を含む短編集。
ドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞を受賞しています。

さて、その「神様」。
大変短いのですが、なんだか優しさと不思議に満ちています。
「わたし」が「くま」と散歩に行くというそれだけの話。
メルヘンめいていて、けれども決して子供向けの童話ではないのです。
この「くま」さんは、確かに熊で、
しかし、なぜか人間界に住んでいて、言葉も話す。
しかもやたら丁寧な言葉遣い。
気遣いも相当なもの。
でも、人間界にいるのはやはり奇異なことらしく、
近所の人からはじろじろ見られたりはするけれど、
大騒ぎにはならないことから、
たまにはあることらしい・・・という、不思議な世界観。

こうなると、実はこの「くま」は、
何かの象徴であるとか、
主人公の潜在意識を表しているだとか、
いろいろ勘ぐってみたくもなるのですが、
それにしては、終始あまりにものどかに話が進みます。
別れ際に、「くま」は言うのです。

「熊の神様のお恵みがあなたの上にもふりそそぎますように。」

まるで、冬の日のひだまりのように、ぽかぽかと暖かい何か。
この熊さんの正体は、子供の頃に愛したテディベアなのかもしれません。

そしてこの本のラストの短編「草上の昼食」が、
実はこの「神様」の続編となっていまして、
この「くま」は、故郷に帰ってしまうのです。
懐かしく、切なく「くま」を思い出す「わたし」。


私が思うに、
これは子供の頃にもっていた夢とか幸福感、
自然=世界と一体であった頃の自分、
それが「くま」なのではないかと・・・。
それはもう、決して取り戻すことが出来ない・・・。

いやいや、このような分析は不要なのでした。
この、なんだか暖かくて懐かしくて切ない何かを感じ取ることができれば
それでいいのかもしれませんね。

他にも、梨畑に住む変なイキモノとか、
河童、
壺に住むコスミスミコ、
等々・・・。
不可解なものが日常生活の中に、ごく当たり前のように出てきます。
この不思議世界の甘すぎず、悲しすぎない存在が、なんだか妙に懐かしい。

時々引っ張り出して読みたくなりそうな本です。

満足度★★★★☆

のだめカンタービレ/最終楽章 前編

2010年01月09日 | 映画(な行)
さあ、楽しい“のだめ”ワールドの時間だ!

          * * * * * * * *




TVドラマでおなじみの「のだめカンタービレ」、全くそのままの続きです。
私は二ノ宮知子原作コミックからのファンで、
TVドラマもしっかり見ていたものですから、やはり、観に行ってしまいました。


この映画は、千秋のマルレ・オーケストラ常任指揮者就任の顛末が軸となっています。
常任指揮者となったのはいいけれど、
このマルレ・オケは歴史は確かにありながら、今や崩壊寸前の貧乏オケ。
初めての客演としての指揮はボロボロ。
「ボレロ」の演奏が「ボロボレロ」に・・・。
しかし、千秋はがんばる! 
さあ、次の演奏会は成功するのか!
そして、のだめと千秋の恋の行方は?



残念ながら今回は前編なので、思わせぶりなところで後編へ続くとなってしまいます。
別に焦りませんけどね。
コミックでは最近ついにストーリーが幕を閉じたところです。
しかし、結末がわかっていてもなお、
この作品は魅力にあふれているのです。
私はTVで再放送などをやっているとつい見てしまう。


しかし、何でこんなに好きでつい見てしまうのか不思議です。
日本編はともかく、このヨーロッパ編はとてつもなく怪しいではありませんか。
竹中直人のシュトレーゼマンなどは噴飯ものだし、
ベッキーのターニャもなんだか・・・。
オーバーアクションだし、のだめは変態だし・・・。
普段あまり見る気にはならない、ドタバタコメディー要素たっぷりなのでが・・・。




魅力の秘密は・・・
まず、のだめの親しみやすさでしょうか。
クラシックでピアノ・・・ときたら、イメージ的には庶民にはちょっと遠い。
しかし、こののだめ、
「ぎゃぼ!」などと突然奇声は発する、
部屋はゴミだらけ、
おにぎり以外の料理もだめ、
という、普通でもここまでひどくはないというレベル。
そののだめが、誰もがあこがれる千秋先輩の関心を得て、
時折才能の片鱗を見せる、という筋立てが私たちの心をくすぐるのです。

また、普段はのだめが千秋を追う構図なのですが、時折これが逆転する。

一緒に、ヨーロッパへ行こう。
この千秋の誘いに、のだめは拒否。

今回の映画では特にこういうシーンは無いのですが、
たぶん、後編ではまた出てきますよ。
いつもは無関心を装う千秋が、真剣にのだめを見つめようとすると、
するりと逃げてしまう。
ここが何とも面白いですよね。
結局千秋がいつも振り回されている。

さらには、周りのキャラクターがまたいい。
それぞれの個性でそれぞれの道を歩んでいる。
この青春群像的なところも魅力の一つ。
私は黒木君が好きなんです。
ちょっと暗いですが・・・。
留学したての落ち込んでいたあたりは、リアルですね。
のだめの正体がはっきりわかって幸いでした!




そして、何よりこのクラシックという大舞台。
一般的には、難しく退屈と思われるテーマをよくぞここまで親しみやすくしてくれました。
コミックだと、わかりようがない“音”が、
TVや映画ではホンモノ。
これがTVドラマ化の最大の功績です。

この映画中の千秋指揮するマルレオケの「1812年」には
本当に感動してしまいました。
思わず拍手したくなってしまうほど。

さらには、主演の上野樹里と玉木宏。
もう、この役はこの二人以外考えられませんね。
二人がそろえばそれだけで、のだめワールドができあがる。
星空を眺めながら二人が語る、音楽の深淵。
カンタービレの語源。
美しい場面でした。
ギャグをかましながらも、ふとこのようなロマンチック。
いやあ、やめられません。

待たれる後編!。




2009年/日本/121分
監督:武内秀樹
出演:上野樹里、玉木宏、瑛太、小出恵介、ウエンツ瑛士、ベッキー、竹中直人

ナイトミュージアム2

2010年01月08日 | 映画(な行)


時代も場所もごちゃ混ぜの楽しくも不思議な世界を堪能

           * * * * * * * *

夜になると展示物が動き出し大騒ぎが繰り広げられる博物館。
ナイトミュージアムの第2弾です。
ストーリーはそのまま続きで、
ラリー(ベン・スティラー)他おなじみの展示物たちが登場。
しかし、ここではこのニューヨークの自然史博物館が閉鎖されることになり、
展示物たちは、世界最大ワシントンのスミソニアン博物館の倉庫に運ばれてしまった。
そこで今度はそのスミソニアン美術館の中で、
大騒ぎが繰り広げられることになります。

まあ、一応ストーリーらしきものはありながら、それはどうでもよくて、
数々の展示品が動き出す、そのイマジネーションを、
時間のたつのも忘れて楽しんでいるうちにおしまい、と、そんな感じです。



初めて大西洋横断に成功した女性パイロットアメリア・イヤハート(エイミー・アダムス)。
アル・カポネにナポレオン。
イワン大帝にアインシュタイン。
果ては、セサミストリートのオスカーやらダースベーダーやら・・・。
時代も場所も全く支離滅裂。
それでも成り立つところが博物館のいいところですね。

今回は絵や写真の中まで動き回るのが楽しいのです。
アイゼンスタットの1945年当時の写真があって、
そこに入り込んでしまうラリー。
なんとこれはタイム・スリップではありませんか。
こんな手があったのか・・・!
ラリーはここに携帯電話を忘れてしまうのですが、
このエピソードはラスト、エンドロールのところにつながるので、お見逃しなく。

実際、このように展示物が動き出し、思いを語ってくれれば、
大評判間違いなしなんですけどね。
スミソニアン博物館・・・、是非行ってみたいです。

私なら、「映画博物館」を作って、
いろいろな映画の名シーンのジオラマを作りますね。
それが夜になって動き出したら、さぞかし楽しいでしょう・・・。
いろいろの役の何人ものジョニー・デップが動き回って解説をしたりして。
ひゃー、想像するだけでも目がくらむ・・・。

・・・と、いろいろ想像して楽しむ。
これがこの作品の正しい鑑賞法であります。

2009年/アメリカ/105分
監督:ショーン・レビ
出演:ベン・スティラー、エイミー・アダムス、ロビン・ウィリアムズ、オーウェン・ウィルソン

ナイト ミュージアム2 (特別編) [DVD]

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン

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「フィッシュストーリー」 伊坂幸太郎

2010年01月07日 | 本(その他)
フィッシュストーリー (新潮文庫)
伊坂 幸太郎
新潮社

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4篇からなる短編集です。
どれもおもしろいのですが、
やはりこの表題となっているフィッシュストーリーが最高でした。


「フィッシュストーリー」というのは、ほらばなしのことですね。
誰しもつった魚のことは誇張して言うもの・・・。
「ビッグ・フィッシュ」という映画もありましたが、そちらもおもしろいですよ~。


さて、これは、その映画とは全く別のストーリー。
いくつかの章立てがしてありまして、

二十数年前

現在

三十数年前

十年後

という風に、時系列が正しく並んでいないのです。
そこがこの作品のおもしろいところ。
だから、話はそれぞれ独立していて、一見脈絡がないように思える。
でも、最後まで読むと、
ああ、そういう話だったのかと、
ジグゾーパズルが完成したみたいに、最後に全体像を見渡すことができる。
これがなんだか快感なのです。
ストーリーとしては、たとえば「風が吹けば桶屋が儲かる」
そんな風。

ある売れないロックグループが、解散寸前にレコーディングをする。
その中の一曲、なんと数十秒もの無音部分ができてしまったのだけれど、
どうせ売れないし、解散だから・・・と、
やけくそのようにそのまま発売されてしまいました。
確かに全然売れなかった曲なのですが、
その曲が後々地球を救うことに貢献するという、これは壮大なお話なのです。
そんなことある~? 
なんて野暮なことはいいっこなし。
だって、これはフィッシュストーリーなんですから。

やはり、伊坂幸太郎。
短編でもあなどれませんねー。

満足度★★★★☆

「スフィンクス/シリーズここではない★どこか2」 萩尾望都

2010年01月06日 | コミックス
スフィンクス (flowers comicsシリーズここではない・どこか 2)
萩尾 望都
小学館

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この本を見て、まずショックだったのは、
この、萩尾望都短編集シリーズが「2」だったこと。
先に「1」が出ていたのに気づいていませんでしたね。
悔しい・・・。


さて、この本ですが、どの作品もみなよいです。
でも、特に「スフィンクス」には、うなってしまいます。
「スフィンクス」は、ギリシア悲劇を題材にしています。
私はその内容はまったくわかっていないので、
どこからどこまでが著者のオリジナルと、説明はできなくて残念ですが、
おそらく、スフィンクスの「正体」のところは、
彼女自身のイマジネーションだと思います。
ここが強烈。
もともとの神話部分も、すごい話なんですよ。

ライオス王とイオカステ妃は、とても仲むつまじく、平和に国を治めていました。
そうして、ようやく待ち望んだ男児が誕生。
ところが、
"生まれた子供は父を殺し、母と結婚するだろう"
という神託が降りた。
この言葉を信じた王は、生まれたばかりの赤子を殺すように従者に命じる。
従者は赤子を殺すのに忍びなく、道端に捨てる。
ところがその子、オイディプスは拾われ、存外に幸せに成長。
しかし、成長し自らが捨て子だったことを知ると、心が乱れ家出。
その途上、行きあった老人を殺してしまうが、
なんと実はその老人こそが、実の父ライオス。
ちょうどその頃、都ではスフィンクスという怪物が赤子をさらっては殺すので困っていた。
殺した老人の素性には何も気づかないまま街へでたオイディプスは、
そのスフィンクスを打ち倒す。
英雄となった彼は、王の未亡人、つまり自分の実の母を
そうとは知らず妻としてしまう。
・・・つまり、ここで完全に神託は現実となったわけです。

でも、これって変ですよね。
そもそも、始めからこんな神託がなければ、
オイディプスは父母の元で成長し、こんなことは起こるはずもなかった。
捻じ曲がった運命。

このストーリーの中では、更にそのスフィンクスの正体が怖い。
母性。
そして、男にとっての「マザーコンプレックス」。
底のほうに、こういったものが流れているこの作品。
さすがです。
これぞ、萩尾望都の力量ですねえ・・・。


現実の中に違和感を感じ、自分は「人魚」だとつぶやく少女。

自らの「愛」を封じ込め、その情熱を芸術に注ぎ込んでいた老女。


全体を通して語られるのは女の情念でしょうか。
やはり、このシリーズ1をさっそく読まなければ・・・

満足度★★★★★

ファイヤーフォックス

2010年01月04日 | クリント・イーストウッド
ファイヤーフォックス 特別版 [DVD]

ワーナー・ホーム・ビデオ

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米ソ冷戦名残のサスペンスアクション

          * * * * * * * *

ところどころ雪に覆われた山に囲まれている森林。
その中にある湖。アラスカ。
冒頭のこのシーンで、嫌な予感がしてしまいましたね。
また、人食い熊かい・・・って?
はい、でも、ご安心を。
これは全くクマとは関係なかった。


ここに住んでいるミッチェル・ガントという男を訪ねてきた男たち。
彼らは、今ソ連で開発されている最新鋭戦闘機ミグ31、
別名ファイヤーフォックスを盗み出すという大胆な計画実行のため、
彼の出動を要請に来たのです。
ガントは、腕のいいパイロットながら、
べトナム戦争の悲惨な体験により、やや精神障害を抱えていたのですが・・・。

おお、今となっては懐かしい題材ですね。
ソ連ですか・・・。
米ソの冷戦時代というのも結構長かったですからね。
で、この作品では、ガントはなんとかソ侵入に成功し、
地元の工作員たちの協力を得ながら任務を遂行していく・・・と。
けどなんとなく、スリルに欠けるというか、あんまりぱっとした出来ではないですね・・・。
確かに・・・。

これはね、もっと、自信喪失した男が地元の協力員たちの決死の覚悟にうたれて、
少しずつ勇気と自信を取り戻していく、と。
この線をもっと強調すればよかったんじゃないかなあ。
そうだね。なんだか始めから、そうかっこ悪すぎでもなく、かっこよすぎでもなく、存在感薄いよね。
クリント・イーストウッド監督も始めから名監督だったわけではないってことね。

ところでこのミグ31って言うのがすごいですよ。
レーダーにひっかからないって設定はまあ、今はなくはないよね。
もう一つは、思考誘導装置とか言って、
考えただけで、機が反応するんだって。
思っただけでミサイル発射できてしまう。
う~ん、さすがにそこまでは今でも無理かな・・・?
でも、笑えるのは、ロシア語で考えなくちゃダメなんだって・・・。
うーむ。そういう問題なのか・・・・?
そんなばかなー。
ミサイル攻撃命令を、ロシア語で何というのだったっけ?なんて考えているヒマがあったら、
手動でスイッチ入れた方が早いと思う。
だねー。



1982年/アメリカ/136分
監督:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、デビッド・ハフマン、フレディ・ジョーンズ

アバター

2010年01月03日 | 映画(あ行)



パンドラ探訪のドキュメンタリーが観たい

               * * * * * * * *

さて、先に「カールじいさんの空飛ぶ家」で3Dアニメを観たところですが、
懲りずにこちらも3Dに挑戦しました。
これまでにないデジタル3D。
ジェームズ・キャメロン監督が構想14年、制作に4年を費やして、
現代考え得る最先端の技術を用いたというこの作品。
やはり敬意を表して、3Dで観てみなくてはね。


何しろ、この衛星パンドラの世界観には圧倒されます。
その地の美しい自然と独自の生物たち。
そして先住民ナヴィ。
彼らの自然と融合した独自の文化にも心惹かれます。
浮遊する巨岩。
キノコ好きの私は、ついうっとりしてしまうシーンもたっぷり。
これが奥行きのある3D映像で映し出されるのは
やはり意義のあることと思います。
臨場感たっぷり。


この星には地球で大変希少価値のある鉱物が眠っている。
なんとしても、この鉱物を手に入れたい。
このプロジェクトを実行するのは、
地球のどこの国とかではない、一企業なんですね。
このあたりが、実に現代を反映している。

さて、そのためにはナヴィたちがジャマな訳です。
ナヴィたちの懐柔策として、
ナヴィと人間の遺伝子から作られた肉体に人間の意識を送り込むという
“アバター・プログラム”が実行されます。
足が不自由なジェイクはアバターに意識を送り込むことで、
自由に駆け回り、木々や岩山を伝い、巨大な鳥で飛翔さえできる。
彼は次第にどちらが夢でどちらが現実なのか、わからなくなり、
そして、アバターの自分の方に余計現実を感じるようになっていくのです。
初めての飛翔のシーンには、心躍りました。
あの開放感、高揚感。
見事です。
私たちも心は空を飛んでいました。
そして、この星パンドラが大好きになってしまいます。

ナヴィの姿形は、予告編を見たくらいでは違和感がありますが、
観ているうちにとても魅力的に思えてきます。
特にしっぽがいいですね。
何のためにあるのか、よくわからないながら、
感情がそこに見え隠れしそうで、実際あれば楽しいのに・・・と思います。


さて、ところが、その美しい星パンドラの自然を蹂躙する、
何とも無骨なマシン。
銃弾にミサイル。
この違和感に胸が痛んでしまう。
でも、これって地球上で何度も繰り返された光景ですよね。
平和な美しい土地が、戦争によって焼かれ、たくさんの命が失われ・・・。
当然こういうことが思い浮かんでしまう。
ナヴィからすると、人間がエイリアン。
私たちは、権利や利益を求める余り、
何かにとってのエイリアンにもなり得るのです。
常に視野は広く持たなければね。

・・・と、このように映画のメッセージは確かにあるのですが、
主役はやはりこのパンドラの星、だったと思います。
衛星パンドラ探訪のドキュメンタリー(?)作品があったら、みたいくらいです。




空中を浮遊するあのクラゲみたいなの(名前、覚えてない・・・)
いいですよねえ。


・・・ということで、3Dを堪能したことは確かなのですが、
これもまた、何しろ3時間近い作品中ずっと3Dメガネをかけているのは
なかなか苦痛です。
字幕が読みにくいし、画面も暗い。
今後もこのような3D作品が増えるというのなら、ちょっと憂鬱です。
そこをあえて2Dで観るのは悔しい気がするし・・・。
始めから2Dで作ってもらった方がありがたい・・・。


ということで、まあ、せっかくなので3Dで観ることはオススメですが、
これが必ずしも万全の環境ではないことは確か。
最新技術もいいのですが、
先日観た「第三の男」のように、
モノクロ作品でさえうなるほどすばらしい技術はまだまだ生きていると思うのです。
何でもかんでも3Dという方向にならないことを望みます。

2009年/アメリカ/162分
監督・制作・脚本:ジェームズ・キャメロン
出演:サム・ワーシントン、ゾーイ・サルダナ、シガニー・ウィーバー、ミシェル・ロドリゲス





イエスマン/"YES"は人生のパスワード

2010年01月02日 | 映画(あ行)
人生前向きならチャンスも転がり込んでくる!

          * * * * * * * *

ジム・キャリー主演となれば楽しさは保証されたようなものですが、
まだ観ていなかったですね。


3年前の離婚から、落ち込みっぱなし、
何に対しても“NO” で、人生に後ろ向きのカール(ジム・キャリー)。
あるとき友人に誘われて、とあるセミナーに参加します。

【どんなことにでも“イエス”と答えることが、
意味のある人生を送るためのルールである。】

このように、前向きに生き方を変えるためのセミナーでした。
半信半疑ながらも、セミナー会場を後にすると、
さっそく浮浪者に車で公園まで乗せてくれと頼まれる。
渋々乗せてみれば、携帯を貸せという。
貸してみれば長電話で電池切れ。
おまけに最後に金をくれといわれて、有り金すべて出してしまう。
・・・いいことなんか何もないじゃないかと、帰ろうとすればそこでガス欠。
携帯も使えずに、誰かに助けを求めることもできない。
やむなく、遠くのガソリンスタンドまでポリタンクを下げて歩く・・・。
ところがそこに、個性的なかわいい女性アリソン(ズーイー・デシャネル)がいて、
二言三言話をするうちに、バイクで車のところまで送ってくれる、
ということになるんですね。
・・・なるほど、結局ラッキーだった!

こんな風で、本当はいやだと思いつつも「イエス」と言っているうちに、
いろいろなことがすべてうまく回り出す。
むろん、映画のことなので、先には落とし穴も待っているのですが・・・。

でも、基本的には、前向き、ポジティブOK。
迷うくらいなら飛び込め! 
これが人生を楽しみ、成功するための秘訣、というのは、
本当にその通りだなあ・・・と思いました。
イエスということ。
つまりは、人と人とのつながりを大事にするということなんですよね。
そうして親しくなった人たちに、やがて助けられることもある。
ぜんぜん説教くさくなくて、大事なメーセージが込められています。


さて、ジム・キャリーは、黙ってじっとしていればハンサムなんですが、
くるくる変わるあの表情、仕草、やっぱり笑ってしまいますね。
ちょっと疲れたときなどに、観るといい作品です。

2008年/アメリカ/104分
監督:ペイトン・リード
出演:ジム・キャリー、ズーイー・デシャネル、ブラッドリー・クーパー、リス・ダービー



「イエスマン/YESは人生のパスワード」 予告編



「神様のカルテ」 夏川草介

2010年01月01日 | 本(その他)
皆様、あけましておめでとうございます。
拙いブログですが、いつもきていただいている方、
どうもありがとうございます。
2010年となりましたね。
お正月とはいえ、いつものペースで淡々と行きたいと思います。
休暇中、いろいろ本も読めそうですし、映画にもいけそうなので、
またご紹介していきますね。

どうぞよろしくお願いいたします。 

           ★★★★★★★★★★★★★★★



神様のカルテ
夏川 草介
小学館

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この作品は、第十回小学館文庫小説賞受賞作。
それなのに文庫でない、とはこれいかに???
などと突っ込みを入れるのもはばかるほど、これはいい作品です。
いきなり文庫にしてしまうのは忍びない、と、編集者も思ったのでしょうか?


まず、この作品の文体ですが、
いろいろ本を読んでいる方なら、ある作家との類似にすぐ気づくと思います。
つまり、森美登美彦ですね。
この物語の主人公、栗原一止(いちと)は、夏目漱石に心酔するあまり、
普段の話し方や文章が、文語調になってしまった、との弁明あり。
でもこれは前者の影響がモロに感じられてしまうことは避けられません。
森美登美彦が描いた医療小説。
・・・という雰囲気の小説に仕上がっております。
森美氏が京都なら、こちらは信州松本と、地域性を前面に出しているあたりも。

ただし、だからといって決して内容は二番煎じではありません。
栗原一止は、信州にある本庄病院に勤務する5年目の青年内科医。
彼が癌患者の治療とその末期を看取る様子、
同じアパートに住む住人との交流などを通して、
彼自身、大学病院へ移るべきか、このままここへ残るべきか、
人生の針路を見出していくというストーリーになっています。
この病院が、またすごい。
「24時間、365日対応」をうたっている。
そのため、医師は当然ローテーションを組んだ勤務となりますが、
強烈なハードワーク。
多分、これは誇張ではなく、実際こういう実態が常なのだろうなあと思います。
何しろ、この著者自身が医師ですから、
相当自身の思い入れが入っていると思われます。

医師がめざす、あるべき地域医療。
それは、患者個人個人の心に添う治療のあり方なのでした。
だからあまりにも理想的に「いい人」が集まり過ぎていることも否めませんが、
これはこれでいいんですよね、多分。
こんな病院があれば、ぜひ行ってみたい。
そういう病院のあり方の夢を語っているのだから。

この主人公の奥様がまた、なんともかわいらしい・・・。
これって、男性が求める理想の女性像そのまま・・・。
生身の「女」は、実はこうではないぞ・・・、といいたくもなるけれど、
まあ、全体の雰囲気とあわせればこれも仕方ない。


あれ? 全体を通して、なんだか辛口の感想になってしまっているような気がしますが、
実は、とても気に入ったのですよ。
この古風でやさしい全体のトーンも心地よいですし、
ほろりとさせられる部分もあり、登場人物も好感が持てる。
"癒し"が求められている昨今、人気があるのは当然ですね。
ちょっと落ち込んだようなときに、ぜひ読んでみるといい本だと思います。

満足度★★★★★