春先の菜っ葉もの、小松菜とかほうれん草が終わって、いよいよ、夏野菜の登場だ。さすがにナスやトマトは実が着いたばかりだけど、キュウリは早くも初物が姿を現した。まだまだ小さいのだけど、待ちきれずに収穫、まずは昼の冷やし中華に入れて青々とした薫りと、歯切れのシャキシャキ感を味わった。
残りの一本は、待ちに待った糠味噌床へ!
この日のために、冬場を堪え忍び、春をしのぎきった糠床だ。キュウリやナスが終わった秋口からは、カブを漬け、セロリを漬け、挙げ句は保存野菜のニンジンを漬けて、懸命に延命をはかってきた糠味噌床だ。冬越しの後は、そのニンジンさえも無くなり、ひたすらかき混ぜることを日課として生き延びだ漬け床なのだ。
よくぞ、今日まで!
昨年は、糠漬け一年生のくせして、高を括って冬場ほったらかして冬越しさせたら、発酵ではなく腐敗が進んでしまった。あの手この手の再生治療も効果なく、結局一から作り直したものだった。もう、そんな轍は踏まない!固く誓っての、糠床越冬大作戦だったのだ。かき混ぜれば半日は臭いが付きまとう糠味噌。糟糠の妻ならぬ糠味噌夫として堪え忍んだ日々。
前日漬け込んで、朝の食卓に登場。
うーん、このしっとりと艶やかな肌、しなやかな肢体、匂い立つ香味、これぞ漬け物!これぞ糠漬け!大切に大切にそっと口に入れる。このまろやかな味わい、乳酸菌の酸味と糠の旨味の絶妙なバランス!さすがは漬け物の王者、糠漬けだ。大いに満足しつつ神さんの一言を待った。
「ちょっと漬かり過ぎ」それだけ?年越しの初物糠漬けに対して、それしか感想ないの?!それ、あんまりでしょ!
人間、他人の努力なんて見えないものなんだ。すべては結果のみ!
厳しい現実を突きつけられつつも、今日はカブを漬けてみよう、漬けた当人には積み重ねた努力も深い味わいなんだから。