初の野外劇。これまでにない様々な準備をして行かなくちゃならない。
例えば、声だ。ホールと違って、反響しないどころか、開かれた空間、限りなく拡散してしまう。近くを走る車の騒音にかき消されることもあるかもしれない。マイクで拾うって方法もあるけど、それはやりたくない。観客に届く声が不自然だし、一部の役者の声だけ拾うなんてできっこない。今の声量で十分届く人もいれば、ピンマイク付けたくなるような人もいる。全員が生声でしっかり聞かせられるレベルまでビシビシむち打って鍛えたい。
野外での上演を選んだ理由は、外での動きのあるシーンがと゜うしても必要だったからだ。短時間ではあるが、秩父蜂起の様子が再現される。大音声で雄叫びを上げつつ、燃えさかるかがり火の周囲を飛び交い、後方の天神森にも駆け上がるつもりだ。戦いに昂揚した男たちの身ごなしで動いてほしい。年寄りっぽさも女性らしさも、寸分も垣間見せることなく演じ切ってほしい。だから、
シニアよ、身体を鍛えておけ!
と、注文をつけた。本当は、さっ、一緒に走ろうぜ!って言いたいところなんだ。50mくらい全速力で走り切れるくらいの俊敏さを身につけて欲しい。一人を除けば、シニアメンバーたち、みんな僕より年下だ。僕にできるくらいのことはしろよ、って喉から出掛かったけど、そこは我慢、言葉をぐっと飲み込んで、それぞれの力に応じてトレーニングしてください、なんて、柔だよな。できれば、ランニングか階段昇降、せめてせめてウォーキングは各自しておいて欲しいもんだ。息切れしてせりふが出ないとか、足こんがらがって蹴躓くとか、まずいからさ。
身体動かすのが好きなだけに、心の底じゃ、役者たちが舞台上を所狭しと駆け回るそんな芝居を作りたいって思っている。俊敏な動き、巧みな身ごなしから発せられる、空間を鋭く飛び交うせりふ。音楽もあってダンスもあって、ってとことなら、なおのこといい。シニアの舞台で、必ずダンスを入れるのも、その願望の現れなんだな、きっと。
でも、みんながみんな、身体を動かすのが好きなわけじゃない。ウォーキングだって嫌!って人間だっている。ちょっとストレッチしただけで、翌日には筋肉痛!なんて信じられないガチガチ人間だっていたりする。年寄りの冷や水、大けがの元!って本気で信じてる人もいたりするから、お願い、せめて、ウォーキング!ってところで妥協するしかないのだ。
それだって、任せきれない。一人になった時、約束通り鍛えてくれるかどううか。
だから、稽古前に一緒に走ったりできるといいんだ、置農演劇部みたいにね。ただ公民館の廊下、婆さんたちが走ったら、他の利用者も驚くだろうから、ストレッチついでに、もも上げとか、また割り程度を付け加えることで諦めた。でも、まだ最初、徐々に、そーっと、腹筋とか、腕立てとか、忍び込ませて行ってやる。トレーニングは辛くとも、筋力がついて悪いことは、全然ないから。
昨日のEテレで、鳥越俊太郎が言ってたろ、4度のガン手術した後、70歳過ぎで走り始めて、ホノルルマラソン完走したって!筋肉は嘘つかない!って。