このところツイッター上で、何故か「アベノマスク」の話題が盛り上がってる。ホテルから桜前夜祭の領収書とか出てきたし、いよいよ安倍ちゃんも退場の時を迎えつつあるからなのかな?奢れる者は久しからず!コロナ第3波の影響も大きいぜ。世界的嘲笑を買った世紀の愚策「アベノマスク」への怒りと憤懣が改めて噴出してるってことか。
ツイートでは、あの数百億円を医療関係の支援に使えたのにぃぃぃ!とか、河野行革大臣はアベノマスクの検証を行え、なんてのが多い。もちろん、使っているのを見たことがない、ってのは共通認識だ。
先週公演した菜の花座『ディスタンス』の一人芝居にも「アベノマスク」を題材にしたものがあって、これがまた、結構な評判だった。トリックスターとしての面目躍如ってところじゃないか、安倍ちゃん。レジェンド残したかった人だからさ、このマスクの快挙、いや愚挙が先々歴史に名を残すことになって、本望なんじゃないか。コロナ禍、不安い追い詰められる国民に、一時の笑いを提供した功績、小さくないと思うぜ。
と、いうことで、その足跡を振り返る意味で、コントの台本を上げておこう。
『アベノマスク応援隊』
「アベノマスクでSTOP!コロナ」と「アベノマスクは愛の心」、2本の幟を左右に立てて、一人の女がアベノマスクを道行く人に配っている。片腕に籠を下げ中はアベノマスクがいっぱい。足元にも段ボール箱があって、その中もアベノマスクであふれている。満面の笑みを浮かべつつ、
応援隊の女 どうぞ。アベノマスクです。
断られる。
女 無料です。ただで上げちゃいますから。
無視される。
女 ちょっと、ガン無視ってなにさ!
と、膨れっ面になるが、また人が来たのでたちまちにこやかさを取り戻し、
女 暖かい愛の心、アベノマスクをどうぞ。
通行人「効果ないんだろ」と言った。
女 そんなことはありませんですよ。安倍首相の国民への尽きぬ愛が幾重にも織りなされてますから。効果だって、安倍首相ご自身が2カ月間人体実験されて実証済みですから。
通行人、行ってしまう。また、別の通行人通りかかる。
女 仕事の必須アイテム・アベノマスク。備えて安心、アベノマスク。
通行人、「虫とかカビとか、不潔じゃない」とか。
女 違います!虫もカビも着いてません。これは、国内で8億円もの費用かけて550人もの人が1枚1枚検品したマスクですよ。不良品なんてあるわけないじゃないですか。なんたって、無駄な金、いやいや必要な経費たくさんかかってんですから。最初は466億円!ええいっ、負けろい!って260億円値引きしてさらに8億円ですから、レアものですよ、これ。今にきっとプレミア付いて、高値になります。
女、袋から1枚取り出して示す。
女 ほら、ここ、ここ見てください。安倍Loveって刺繍してあるでしょ。特製ですよ、特製。えっ?・・もちろん、私が安倍首相の愛に応える恩返し、相思相愛、心を込めて一枚一枚刺繍しました。
通行人、気味悪くなって走り去る。
女 ちょっと!何なのよぉ。逃げることはないでしょ。
警官が通りかかる。
女 あっ、お巡りさん!そのマスク、不織布じゃないの?だめでしょ、アベノマスクしなくっちゃ。あなた、国民の公僕たる警察官なのよ。誰よりも率先してアベノマスクでしょ。
警官「でも、閣僚や自民党の先生方もしてませんよ」とか。
女 ああ、あれね。そう、閣僚も官僚もはだれもしてない。あれって、ほら、気使ってるのよ。安倍親衛隊って思われないように。安倍首相の周囲じゃ、忖度、おもねりっぽく見えるのは御法度なのよ。いや、もちろん、してるわよ、忖度もおもねりも。でも表立っちゃまずいでしょ、マスコミに責められるから。だから、内緒でね、閣議決定してるの。アベノマスクは首相特権だ、って。でもね、下っ端はいいのよ.。下級公務員はいいの。黙ってすなおに言われたり通りすればいいの。公文書改竄しろとか、国会で嘘の答弁しろ、って言われるよりましでしょ。アベノマスクつけるくらいどうってことないでしょ。忖度しなさいよ。おべっか使いなさいよ。きっと、交番勤務から白バイ隊に抜擢されるわよ、首相の一言で。
警官、「白バイ乗りたくありません」とか
女 あら、何言ってるの!花形じゃない。オリンピックで先導するのよぉ。オリンピック?できるに決まってるわよ、皆さんがこのマスクさえつければ。アベノマスクは、世界中が注目、ああ、ちょっと待ちなさい。
警官、付き合っていられないと立ち去る。
女 まったく、もう、欲のないお巡りさん。
女、客席に気づく。
女 あら、たくさんいらっしゃるじゃない。今、そっちに行きますよぉ。アベノマスク差し上げまぁぁぁす。だめですよ、そんな不織布マスクなんて。
と、演技エリアを仕切る透明の壁にぶち当たる。出口を探りつつ、
女 なんなの、この見えない壁は!誰なの、こんな壁作ったのは?そうか、これなのね、安倍さんと国民とを隔てる壁は。
第9話 完