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戦争はそこにある!『ヒトラーとナチ・ドイツ』

2021-03-09 10:17:45 | 本と雑誌

 「なぜ文明国ドイツにヒトラー独裁政権が誕生したのか?」これが副題だ。石田勇治著『ヒトラーとナチ・ドイツ』講談社現代新書。

 読めば読むほど、他人事じゃないぜ。いや、日中戦争前の日本のこと思い描いてるんじゃない。今だよ、今。

 ナチスの台頭を許したころ、ドイツは経済の行き詰まりと、第一次大戦敗戦処理の不満の中にあった。そのイライラ、もやもやを一気に吹き飛ばすと登場したのが、ヒトラーだった。

 敵、ユダヤ人と共産主義者、を見える化し、激しく叩くことで、若者たちの欲求不満と潜在的な暴力志向を解き放った。多くの人々の内なる差別意識にゴーサインを出した。儲かるならばと経済人は同意を与え、ユダヤ人の財を手に入れようと、群がり貪った隣人たち。純粋ドイツ人の優越性幻想に浸りきった人々。特別の偏った人たちなんかじゃない。

 民主主義なんてうっとおしい、議論なんて必要ないと、ヒトラーナチスの独裁を傍観した国民。共産党員や社会主義者がでっち上げの罪状で収容所送りにされ、虐殺されるのを静観した人たち。次の弾圧が自らの身に迫った時、争うようにナチスの党員証求めた人びと。ポーランド侵攻に喝采し、パリ陥落に踊りあがった人々。

 ほとんどの国民が、諸手を上げて、いや、片手を真っ直ぐに伸ばして、ハイルヒトラーを叫んだ。

 ナチ党が国会議員選挙に名乗り出てからわずかに12年の激変だ。そして、さらに4年、壊滅的破壊とともに燃え尽きたドイツは、ユダヤ人ホロコーストという消えることのない罪障を背負った。

 もう一つの本『イギリス近代史』村岡健次・川北稔編著、ミネルバ書房、にも、戦争が人々を一つにまとめ上げて行った様子が見える。

 与党も野党もない。激しく政権に立ち向かっていた女性参政権運動もすべて中断、宿敵ドイツを倒すべくチャーチルにほぼ全権を委託した。議会主義の中の独裁。

 ファシズムが相手だったから、ってことは小さなことだ。戦争だ。母国、イギリスが戦う以上、国として勝たねばならない。民主主義の先端国、イギリスにしてあの熱狂だったのだ。

 第一次大戦でヨーロッパ全土で数千万人の犠牲者を生んだわずか20年後のことだ。

 日本は先の戦争で多大の犠牲を払い、平和国家に生まれ変わった。たしかに、争いに巻き込まれることなく、戦争加担はあったものの、平和のうちに70年以上をやり過ごして来た。

 だが、そんなものは、国と国との軋轢、衝突の前には、簡単に蒸発するに違いない。トランプに燃え立ったアメリカを見れば、その危うさは見て取れる。

 国、国家、というものに、惹かれる気持ちを持ち続ける限り、国益や領土にこだわる限り、人々は熱く語り、激しく燃え上がり、絶叫する。我が国の領土を守れ!他国からの侵略を許すな!尖閣は、竹島は、北方領土は、・・・

戦争は、すぐそこにある現実だ。

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