日本じゃどうして階級意識ってもんが育たないのか?それに引き換え、イギリスの労働者ってどうしてああも自階級への帰属意識が濃厚なのか?とか、イギリスの女性選挙権獲得闘争のめちゃ過激さは何故可能だったのか?なんてところが知りたくて、イギリス近現代関係の本を読んでる。
でも、それらはちょっと、名目上!ネトフリで見る映画のシーンに引きずられて、ってところも大きい。先日触れた『ピーキー・ブラインダーズ』とかの他にもイギリス植民地時代のカナダを描いた『フロンティア』とか、スコットランド独立の戦い、ジャコバイトたちを題材にした『アウトランダー』とか、何故か本当に多いんだ、イギリスものが。そうそう、昨日書いた『オーファン・ブラック』でも主人公はイギリスで育てられてるし、育ての母親、ミセスSはどうやらIRA・アイルランド共和国軍の元闘士らしいんだ。いや、まだ最後まで見てないけど。
ポイントは産業革命前後から20世紀前半までのイギリスだな、ってことで、今読んでいるのは『イギリス近代史』村岡健次・川北稔編著、ミネルヴァ書房刊てやつだ。中世から足を洗った頃から第2次大戦後のイギリスまで広く取り扱っている。400年間を一気にたどるから、網羅的になるのは仕方ないんだが、高校時代世界史を取らなかった人間にとっちゃ、宗教改革とかピューリタン革命とかアイルランドのジャガイモ飢餓なんて、上っ面聞いただけの史実も、さらりと学ばせてもらった。もちろん、当時の宗教・政治向きの話しばかりじゃなく、経済とか社会とかの動向にもページが割かれている。
眠気を覚まし、目薬点しつつなんとか前半を乗り切ったら、とたんに面白い記述がだだぁっとなだれ込んできた。「工業化時代の生活と文化」の章だ。イギリスでどうして女・子供が工場労働に動員されたかとか、熟練労働者の暮らしはそれほど貧しくなかったとか、都会の金持ちたちの洒落者趣味が、下の階級にも広がる、一種の消費革命も起こっていたとか、いやぁ、知らなかったぜぇ!って話しが続々と登場してきて、なるほどそうだったのか!の連続だ。
中で、ついついほくそ笑んでしまったのが、労働慣行についてだ。職場では仕事終わりにその場で一杯!なんてことも少なくなかったってことで、おうおう、これ、俺もパン屋の職人見習い時代やってたことだぜ、いや、学生時代(岩手大農学部)、醸造試験場のアルバイトの時も帰り際に三角フラスコで温めた検査用日本酒飲んで、体温めてから寒風の中、盛岡市街を自転車で突っ切って帰ったっけ、なんて懐かしく思い出しちまった。そう、今から50年くらい前の肉体労働の現場じゃ、職場で酒盛りなんてけっこうざらにあったんだよなぁ。イギリスの労働者も、おぅ、ご同輩!つてことで俄然、親近感抱いちまったぜ。
酒飲みの話題でさらに興味深いのは、パブの話しだ。イギリス庶民のたまり場、パブ、今でも存在感たっぷりのようだな。ここでビール片手に無駄話で時間つぶす、テレビの街歩き番組なんかじゃ必ず出て来る場所だ。そのパブ、実は、公共的集会場だったんだ。一つは、教会が地域コミュニティの要であった時代が変わり、(イギリスの近世って、キリスト教の宗派争いの歴史みたいなもんだったらしい)パブがその役割を肩代わりしたって事実。も一つ、社会福祉の窓口でもあったってこと。
これにゃ驚いたぜ。
イギリスって国は、もともと支配階級のジェントルマンが地域住民の生活支援の義務を負わされていたそうなんだが、これが、産業革命の進行で、儲け主義がはびこって困窮者の面倒なんてみなくなる地主・ブルジョワ層が増えた。そこで、労働者や貧民たちが立ち上げたのが、友愛会、仲間内の共済組合だった。互いに金出しあって、首切りとか病気とかの時には、資金提供をして助け合う、互助会ってことだな。
その友愛会の事務所が、なんとパブにあったんだ!どうだい、これはびっくり仰天だろうが。
パブが福祉の窓口!こりゃ、みんなして集まるわけさ。酒飲みながらくっちゃべって、情報交換して、困ってる仲間の心配をしてた、なんて!パブの見方が一変するぜ。
こういった、へぇ~の事実が次々に出てきて、いやぁ、知ってみなきゃわからんことだらけだよな、世界って!歴史って!が痛感させられる。実は、イギリス労働者の働き方改革?について書くつもりだったんだが、酒飲みの話題に流されちまった。ってことで、次回に続くだな。