おぅおぅ威勢のいいこと。で、寿退団って何よ?
演劇に熱中して青春を突っ走って来た女性たち、結婚とともに演劇シーンから引退して行くんだよ、アマチュア演劇の世界では。20代の半ば、あるいは30代に届いて、演技力もついて来たな、女の魅力もぐぐんと増して来た、と、身を乗り出した途端、あっ、結婚するんでぇ、妊娠したんでぇ、辞めます劇団!もう、何人こんなふられ方をしてきたんだよ。
人生のお目出度、女としてのワンランクアップ?新しい命の誕生、祝福して上げなくっちゃ、って思いの底で、じくじくと恨みがましい未練の炎がくすぶってる、これが座長、台本作者、演出家の掛け値なしの喪失感なんだ。今度は、主役で書こうと思ってたのにぃ、とか、新しい役柄準備したんだぁ、とか。ふられた男の後追いセリフ、それを言ったらお終いよ!
なんとか、結婚しても、子育て中でも役者として舞台に上がれないもんか?結婚から子育て完了までの20年弱?これを棒に振るなんて!一番脂の乗った時期じゃないか女優として。しかも家事に子育てに振り回されりゃ、せっかくの脂だって干からびて来るってもんだぜ。おっと、それからでも存分に輝く女性はいるけどね、菜の花座にだって。でも、その輝きはまたちょっと色合いが違う気もするんだ。
女の幸せは結婚、出産、そして育児、この世間の常識が改まらないことには、寿退団、人生中抜きの流れは変わっていかないのかなぁ。演劇命の女性たちの育児休業相次いで失意の中、諦め切っていた。
ところが、今回の新入団希望者だ。なんとぉ、この家事没頭の年齢、女性の年齢書かずに済ますこの婉曲表現!なんだぜ。子育て終えて手が掛からなくなったので再開したいと。お、おい、小さいじゃないか子ども二人。上は小学校にこの春入学って、いいの?大丈夫なの?
ダンナが自由業で面倒見られるし、子どもも演劇好きで応援してくれるってとてもいい子だから。そうかぁ!立派だぜダンナ。いい家庭環境作ってるね。
こういう女性が出て来た!これはお見事!大絶賛だぜ。瑞々しさと初々しさを残したままで、また舞台に上がることができる。演じられる役もたくさんあることだろう。って言うか、演ってもらうよ、書かせてもらうさ。
彼女の舞台復帰情報を聞いて、今子育てまっさかの休団中女優たちもむらむらと野心の炎が再燃しつつあるんじゃないかな?舞台の魅力、演じる魔力、劇団の包容力、存分に知ってしまってる彼女たちだからな。早く戻りたい!って駄々こね始めんじゃないか。
女だから、子育ては一切合切とか、子育て中は一心不乱とか、家庭がすべて、なんて常識が少しずつ壊れ始めてんじゃないか。仕事だって同じことだ。結婚したって、子ども出来たって、子育て中だって、やりたいことは棚上げする必要はない。なんとか上手く折り合い付けて、続けて行く、そういう女性の生き方が始まろうとしている、そんな明るさを垣間見たんだ、新入団員の笑顔に中に。
それぞれの家族の中で、葛藤が繰り広げられることだろう。男も変わらなくっちゃならない。買えなくちゃならない、男のために。無理はしてほしくはない、が、粘り強く希望の道を探って欲しいもんだぜ。って、おいおい、これ家庭秩序紊乱者の扇動じゃねえか。