ステージおきたま

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コントとランとご飯パンにうつつを抜かす老いの輝き

婆さんコント:「霊感商法」台本アップ

2012-11-12 20:18:26 | 脚本
 川西町芸文祭で上演したコントの第二弾「霊感商法」の台本をアップしよう。
 ナオミの婆さんは板に付いてきた。婆と言えばナオミとなる日も遠くないだろう。当人は、不満のようたけど。





霊感商法




作・河原俊雄






婆さん・・・・・・・・・・・・・佐々木直美
霊感商法の女・・・・・・・・・・吉田夏奈美


           霊感商品販売の女、婆さんを訪問する。
女      お婆さん、大変ですよ。この家には、霊が取りついてます。
婆さん    ああ、ほだべ、ほだべ。
女      気づいてたんですか?
婆さん    そらわかっこで。財布ん中いつだってスッカラカンだもの。
女      はあ?霊ですよ、霊。なんで財布と関係あるんですか。
婆さん    ほだ。〇だべ。きれいさっぱりなーんもなしの〇。ジェロ!
           と、指で丸を作る。
女      違います!霊です。
婆さん    ああ、わかった。レイな、レイ。
           と、ハワイアンが鳴り、フラダンスのレイを取り出し首に掛けて踊る。
婆さん    よく知ってたことな、おらフラダンスはまってっこと。なっ、上手いもんだべ。○○(フラダンスグループの名)で踊ってんなよ。
女      違います!!
           音楽びたりと停止
女      死者の霊です。死んだ魂の呪いです。最近、どなたか、お亡くなりになりませんでしたか?
婆さん    あれま!よく知ってこと!!
女      お婆さん、その方に辛く当たったりしませんでしたか?
婆さん    ありゃ、ばれたか。よっく頭ひっぱたいたりしったんだ。
女      なんと、暴力ですか。虐待ですか。
婆さん    食い物やらねえこともあったな。
女      饑餓の強要!そりゃあ恨みますねぇ、呪いますよ。
婆さん    ほだべか?けっこう他所の家行って、残りもん食せてもらったりしったから、腹はへってねかったと思うな。
女      非道い!食事を与えられず!泣く泣く他所様で!残飯を!
婆さん    ほだ、よく泣いたったな、トラさんは。
女      寅さんっておっしゃるんですか、お爺さんは。
婆さん    爺さんではねえよ。だいぶ耄碌はしったけど、爺さんではねえさ。雌だから。
女      雌?
婆さん    ほだ。雌猫だ、寅さんは。一ヶ月前、死んだんだ。
女      なんだ猫ですか。
婆さん    猫はダメか?
女      猫の霊なんてないでしょ。
婆さん    ありゃりゃ!化け猫は?猫又は?猫娘は?猫婆は?
女      わ、わ、わかりました。猫の霊じゃありません。人間の死者の話しです。
婆さん    はっ!
女      心当たりありますか?
婆さん    ある!男殺した!
女      なんですって?!殺した?猫の話しじゃないでしょうね。
婆さん    ああ、人間の男だ。男。
女      いつですか?
婆さん    たしか、・・・先週の金曜日だ。うん、そうだ。
女      先週?金曜日?どこで?
婆さん    森の中だったな、あれは。
女      どうやって、こ、こ、殺したんですか?
婆さん    マシンガンでだだだだって。
女      マシンガン?
婆さん    ほだ。マシンガンで悪党どもを皆殺し。いやぁぁぁぁ、気持ちいがったなえ。
女      ちょっと!それもしかして?テレビの名画劇場?
婆さん    ほだ。アメリカのギャング映画!見ねかったか?
女      見た!見た!すっごく面白かった!
婆さん    ほだべ。森の中を逃げ回る悪党どもをマシンガンで、だだだ、・・・・
女      そう、ばたばた倒れて、・・ってなんでテレビの中の殺人が、この家の霊と関係あるんですか?
婆さん    ほだって、最近、死んだ者はいねか?って聞くから。
女      あれは映画でしょ?本当に死んじゃいないでしょ?
婆さん    あれまぁ、死んでねえなか?あれ。
女      死んでません。フィクションです。
婆さん    ほうか、風邪ひいただけなんか。
女      なんですか?風邪って。
婆さん    ハクションなんだべ。
女      違います!フィク、・・・もういいです!
婆さん    もういいです、って!あんた、そがに簡単に諦めていいなか?なんか霊魂に絡んで用件あんなべ?
女      御霊鎮めの壺、お勧めしたいと思いましたが、お婆さんには無用だって納得しました。
婆さん    呪いの霊魂、いねぐなったってことか?
女      はい。その代わり、貧乏神の臭いがぷんぶんとします。
婆さん    あれまぁ、貧乏神って臭せえなか?
女      はい、臭いです。臭います。
婆さん    どんな臭いだ?
女      えっ?それは、辛気くさいって言うか、貧乏臭いっていうか、・・・
婆さん    それって臭(にお)いだか?心理的状況を表現する形容詞でねえか?
女      うっ!国語の勉強は置いといて・・
婆さん    置くな!勉強置いたらわかんね!人間生涯学習!小学校、中学校、高等学校、成人学級、老人大学、死ぬまで勉強!死んでも勉強!!
女      死んでどうやって勉強するんですか?
婆さん    えっ、まあそれは、あっこであの世にだって学校くらい。
女      わかりました。で、ともかく、貧乏でしょ?
婆さん    ほだな、金はねえわな。
女      それなら、これですよ。金運財布!
婆さん    なにや?金運財布?
女      そうです。この財布を持てば、がっぽがっぽお金が貯まります。
婆さん    がっぽがっぽ!
女      そう、がっぽがっぽ!
婆さん    がばがば!
女      そう、がばがば!
婆さん    ほんじゃ、あんた金持ちだな。
女      えっ!?
婆さん    ほだべ。その財布持ってんなだもの。
女      それは、まあ、・・・
婆さん    それ売らねえで、自分で持ってたらいいべ。
女      いや、私は、まだ沢山、持ってっから、・・・
婆さん    なにぃぃ!金運財布いっぺえもってんなか?ほだら、大金持ちでねえか。
女      いえ、まあ、大金持ちってほどではないですけど、・・・・
婆さん    金あんのに、なして商売なんかしてんなや?
女      そ、それはですね、・・
婆さん    遊んで暮らしてたらいいべ、金運財布でがっぽがっぽでがばがばなんだもの。
女      いや、その、それ、働かぬ者食うべからずって言うでしょ。労働は大切だから。
婆さん    ほだら、ボランティアでもしったらいいこで。貧しい人だのお役に立つように。
女      そうそう、ボランティア、ボランティアですよ、この財布売るのも。
婆さん    なして、財布売んながボランティアなのや。ただでけっちゃらいいべ。
女      それは、それは、ダメでしょ。
婆さん    なして?その財布、全国の年寄りさくばったら、年金問題いっぺんに解決すっぞ。
女      いや、だから、昔から言うじゃありませんか、ただより高いものは無いって。
婆さん    なるほど。
女      ねっ、だから、ごくごく安い価格でお分けてしてるんですよ。
婆さん    安いって、いくらや?
女      たったの5万円です。
婆さん    ほぇぇぇぇっ!5万円ちぃうたら、年金一ヶ月分だした!
女      安いもんですよ、5万円払えば、後はがっぽがっぽ!
婆さん    がっぽがっぽ!
女      がばがば!
婆さん    がばがば!
女      ねっ、安い買い物だ。がっぽがっぽ。
婆さん    うーん、がっぽがっぽ。
女      欲しいでしょ?がばがば。
婆さん    うん、欲しい。がばがば。
女      たったの5万円!
婆さん    そのたったが無い!スッカラカンのカンだもの。
女      だって、年金月だもの、もらったばかりでしょ。
婆さん    年金は、借金の支払いで消えた。
女      それじゃあ、又、借金して、・・
婆さん    待て!こういうなどうだ。
            と、婆さん壺の入った箱を取り出す。
婆さん    我が家に代々伝わる家宝の壺。
女      物々交換なんてダメですよ。
婆さん    そんな!とんでもない!!5万円の財布なんぞと交換できるものか!
女      そんなに価値のあるものなのですか?
婆さん    ああ、ほだ。どんなに貧乏してもこれだけは、手放しちゃわかんね!ってじっと堪えて取っておいたんだ。
女      でも、ただのがらくたかもしれないじゃないですか。
婆さん    なんのなんの!折り紙付きよ。保証書付きよ。
女      誰の保証ですか?
婆さん    ほれ、テレビでやってっぺ、なんでも鑑定団。
女      えっ!ひげのおじさんの番組?あのお宝の価値を鑑定する番組?
婆さん    ほだ、去年よ、この壺、出してみたんだ。したら、 
女      したら?
婆さん    おっ、急になまったな。
女      いいから、それでいくらの値段付いたんですか?
            婆さん、箱からやおら紙切れを取り出し、女に渡す。
女      ご、ご、五十万円!!
婆さん    ほだ、五百万くらいの値は付くと思ったけんどな。
女      これとだったら、物々交換でも、・・
婆さん    なに、馬鹿言ってんな!五十万の品、5万円の財布と交換するアホどこにいんな?
女      まっ、まあ、そうですね。
婆さん    これをあんたに買ってもらって、そのお金でその金運財布をおらが買うちゅうのはなじょだべ。
女      そんな五十万円なんて金、持ってるわけないじゃないてすか。そんな金あったら、こんな商売してませんよ。
婆さん    あれれっ?ボランティアでなかったな?
女      あっ、そ、そう、ぼ、ボランティア、ボランティア。
婆さん    ほだべ、金持ちだもんな。
女      そう、金持ち。金運財布持ってるから。で、でも今、持ち合わせないから。
婆さん    金持ちだからちゅうて、いっつも大金持ち歩いてるってわけねえもな。そりゃそうだ。よしっ、わかった。40万円。
女      いやあ、手持ちがぁぁぁ、・・・
婆さん    ほんじゃいくらなら持ってんな?
女      十、・・・・
婆さん    なに?!
女      十万円。
婆さん    馬鹿くせえ。時価50万円って鑑定された家宝の壺だぞ。止めた。
           と、壺をしまい始める。
女      い、いや、待って!15万円!これほんと持ち金全部。
婆さん    止めた!
           と、壺をしまう。
女      わ、わ、わかりました。20万円!本当にこれしきゃないですから。
婆さん    あんた、30万円も儲けようってのか?
女      でも、本当、それしかないですから。よしっ、それなら財布もサービスします。5万円で財布二つにします。
婆さん    三つ!
女      三つ!そんな!
婆さん    止めた!
女      わかりました。財布三つで5万円。それじゃ、気変わらないうちに、
           と、財布から20万円を取り出し渡す。
婆さん    仕方ねえな。
           と、札を受け取り数える。
婆さん    たしかに。ほんじゃここから5万円あんたに支払ってと。
           女、金を数え、2人品物を交換する。
婆さん    2人ともいい買い物しっったな。これであんたは30万円をがっぽがっぽ。
女      お婆さんは金運財布でがばがば。
2人     うふふふふ!
女      それじゃあ、お婆さん、金持ちになってくださいね。
婆さん    はいはい、あんたも上手に売って儲けてな。
           女、壺を大事そうに抱えて出て行く。
婆さん    いやあ、良かった。騙されて買わさっちゃインチキ壺、ようやく売っぱらえた。お宝鑑定団の偽の鑑定書にころっと騙さっちぉ買っちまったもんだもなぁ。あん時ゃ、10万円。15万円で売れたから、5万円の儲け。それとこの財布。さあて、今度はこいつで一儲けすっかな。



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