せっかく雪が積もったっていうのに、今年のクリスマスは寂しいものになるかな。もっともそれは繁華街や夜の街の話し。子どもたちにゃきっとサンタさん来てくれるさ。福島の飯坂温駅前じゃもうサンタさん到着したって話しだし。そう、サンタタクシーね。あづまタクシーの皆さんサンタさんに扮して運転してくれる。その出発式にゃ恒例のサンタコントの披露もある。
えっ!?タクシー会社がコント?
そうだっ!何を隠そう、あづまタクシー、社長も専務も菜の花座の劇団員なのだぁぁぁ!驚いたかっ、ふはぁっはっはぁぁぁ!ってほどじゃないか。
そのコントの台本を今年も頼まれた。WHOじゃ、サンタさんはコロナに罹らないと宣言したが、なんのなんの、各国の玄関口じゃ厳しいチェックが行われているぞ。さぁて、サンタさん、入国チェックを見事通過できるかな?
『サンタさんの入国審査』
サンタクロース
入国審査官
コロナウィルス
空港の入国審査窓口。透明パネルのブースの中で、フェースガードをした審査官が入国審査を行っている。審査官は腰のベルトに二丁拳銃のように殺菌スプレー指している。
パネル外、通路側には台があり、その部分は透明板が切り取られて窓口になっている。その台の上には、コロナ探知機・「ハヤクサ2」が置かれている。「ハヤクサ2」は「ハヤブサ2」に似ていて、突き出た太陽光パネルがグルグルと回っている。コロナウィルスを感知すると警告音を発する。
防護服に全身を包んだサンタクロースがやってくる。飛行機で到着したところだ。もちろん、肩にはプレゼントが入った大きな袋を担いでいる。すぐ後ろにコロナウィルスがサンタに隠れるようについて来る。コロナウィルスは、黒衣装の上に、胴体と頭にコロナウィルスの被り物を付けている。
サンタ お疲れ様ぁぁぁ!
と、審査通路を通り抜けようとする。コロナも続く。探知機が警戒音を発する。
審査官 待った、待ったぁ!コ、コ、コロナ接近中!コロナ要警戒!
審査官、腰からスプレーを引き抜き、そこら中に噴霧する。コロナ、慌てて、探知機から遠ざかる。警戒音、止む。
サンタ メリークリスマス!
と、ゲートを通過しようとする。
審査官 なんだ、メリークリスマス!って。クリスマスのイベントで夜のクラブに入ろうってんじゃないんだ。書類、入国書類を見せてもらおうか。
サンタ おお、そりゃそうじゃ。コロナ禍だから、審査も厳しくしなけりゃならんよな。
審査官 そうとも。まず、その防護服を脱いでもらおう。
サンタ あっ、いいのかい?よかった、よかった。いやぁ、暑苦しくてさぁ。
と、サンタ、防護服を脱ごうとすると、コロナ素早く寄って来るので、探知機警戒音。審査官、早撃ちガンマンよろしくスプレー噴射。コロナ、隠れる。サンタ防護服を脱ぐと、下にはサンタクロースの定番衣装を着ている。
サンタ ほら、サンタクロース間違いなし、じゃろ。
審査官 衣装着てたからって本物とは限らない。新宿歌舞伎町にゃ、何人もサンタクローズが歩いてる。ビザ、ビザ出してもらおうか。
サンタ そんなもんはない。全世界どこの国だろうと、どの家だろうと、出入りお構いなしのサンタさんじゃもの。
審査官 それはコロナが流行る前の話しだ。今は非常事態、入国管理も厳戒状況なんだよ、ジイサン!
と、審査官、スプレーを拳銃のように回転させて、先端を口元に持って来て、ふぅと硝煙、いや、殺菌剤の霧を吹き払う。
サンタ ジイサン!なんと、ジイサン!呼び捨てか。せめて、おジイサンとか、お爺様、とか言えんのか。
審査官 うるさい。(と、噴霧器を突きつけ)ジジイ、サンタクロースがどうして飛行機でやってくるんだ。トナカイの橇はどうした?
サンタ それよ!困ったことにな、トナカイの奴ら、ボイコットしおってな。感染急拡大中の日本には行きたくない、なんて駄々こねておるのさ。で、仕方なく飛行機で。
審査官 許せぬ!トナカイごときが。我が国のコロナ対策は万全だ!逆さまだっ!こちらこそ、来てほしくないのだ。
サンタ いや、まあ、トナカイの言い分だから、そう熱くならずに。
審査官 クリスマスなど、中止だ、このコロナ禍では。
サンタ そうはいかんだろ。何と言っても、子供たち、待っておるからね。なっ、そうだろ?
と、見物の子供たちに同意を求める。
子供たち そうだ、そうだ!待ってたんだぁ!
審査官 うん、まぁ、それは、・・わかった。ではPCR検査だ。
と、ビン洗浄用のブラシを取り出し、サンタの鼻に突っ込もうとする。サンタ、慌てず、ブラシを取り上げると、審査官のフェースガードを持ち上げ、鼻または口に突っ込む。(鼻の方が面白いが)
審査官 げげっ!止めろ!私は、すでに受診済だ。陰性だ。(喉または鼻の奥にブラシを差し込まれつつ叫ぶ)
サンタ わしもじゃよ。故郷を出る時、済ませておる。アビガンもレムデシビルも飲んできた。ポピドンヨードでうがいもしてきた。
審査官、ようやくブラシを引き抜いて、
審査官 何するんだっ!ジジイ。わかった。PCRは陰性としておこう。それじゃ、これ。
と、毛布を1枚渡し、
審査官 向こうの待機エリアで2週間、寝泊まりしてもらう。
サンタ えっ、2週間!
審査官 そう、食べ物はたっぷり準備してある。カップラーメンと乾パンと魚肉ソーセージと野菜ジュース、各42個。
サンタ そんな貧弱な食事で?
審査官 貧弱とはなにか!これが日本の若者の標準食だ。野菜ジュースがつくだけましだ。
サンタ 困る!それは困る。2週間も経ったら、クリスマス終わってしまうじゃろうが。
審査官 規則だ!公文書は破棄しても、規則は曲げられぬ。
サンタ いや、そうは言っても、・・
審査官 規則だ。公文書は改竄しても、規則は曲げられぬ。
サンタ それはそうだが、・・
審査官 領収書は捨てても、規則は曲げられぬ。
サンタ だからぁ、・・
審査官 が、・・
サンタ おう、が!その先は?
審査官 が、法律は変えられる。
サンタ えっ!?本当か?それそれ。
審査官 が、それは大臣の特権だ。
サンタ なんじゃい。賄賂じゃないか。卵業界が農水大臣にやったやつな。法律は変わった、袖の下で。
審査官 が、規則は生まれる。
サンタ やれやれ、・・・
審査官 が、規則は曲げられぬ。
サンタ またか。そこの、が(我を)を、折って、・・
審査官 が、
サンタ だから、が、をはしょって、・・
審査官 目はつぶれる。
サンタ なんだ、なんと言った?
審査官 目をつぶれば、規則は見えない。
と、そっぽを向き手を差し出す。
サンタ あっ、そういうことかい。子どもたち向けのプレゼントをネコババしたいと。
審査官、手を引込め、
審査官 あっ、目が覚めた!仕事、仕事。ほら、ジジイ、毛布持って待機エリアへ行きな。
サンタ、担いだ袋を持ち替え、口を開ける。
サンタ 待て、待て。眠くなぁれ、眠くなぁれ!
と、袋の中を物色する。
審査官 あれぇ、なんだか瞼が重くなってきた。
と、手を出しつつ、目をつぶる。サンタ、アベノマスクとトランプマスクを取り出し、審査官の手に乗せる。
サンタ ほれっ、あんたにゃ必需品じゃろ。特製アベノマスクにトランプ大統領マスク。
と、警戒音鳴り、コロナ、元気になって周囲を飛び跳ねる。審査官、慌てて噴霧する。コロナ、退散。
審査官 なんてものを出すんだ!コロナウィルスが喜んでるじゃないか
サンタ あっ、ダメか。それじゃぁ、これならどうだ。アマビエ人形。
と、アマビエの人形を取り出す。
審査官 そんな子どもだましで寝てられるか。
サンタ いや、わしは子どもたちにプレゼントするわけだから。
審査官 ああ、すっかり目が覚めた!バチッ、バチッ!
と、指で目を開く。
サンタ フィンランドで大人気、魔除けの黒水晶!ほれ、これなら、コロナも近寄って来まい。
審査官 うーん、なんかもう一息だな。まっ、是非にと言うなら、これももらっておく。
と、水晶をポケットに仕舞い、さらに手を出す。
サンタ 欲の深いやつだな。日本で流行、「鬼滅の刃・コロナ鬼編」!
と、マンガを差し出す。
審査官 読んだ!もっと、腹にたまるものはないのか?
サンタ 食いものか。ますます意地汚いやつだ。
と、袋をかき回し、箱を取り出す。
サンタ アマビエクッキー!
審査官 不味そ。
サンタ わがままな奴め。それならこれでどうだ!ゴーツートラベルクーポン、10枚つづり!
審査官 それっ!それなら1週間でも2週間でも目をつぶっちゃう。
と、警戒音鳴り響いて、コロナ、激しい勢いで審査官に襲い掛かる。審査官、クーポンを口に咥え、両の手でスプレーを噴射してコロナに応戦する。コロナも負けてはいない。
審査員 うーん、コロナめ!負けるものかぁ!ゴーツートラベル、絶対行ってやるぅぅぅ!自粛なんてするものかぁぁぁぁ!
激しい攻防戦の横をサンタクロース、素通りする。
サンタ さぁて、日本の良い子たちは、お家でじっとして待ってくれてるかなぁ。
と、立ち去る。審査官とコロナ、さらに戦いを続けている。
完
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