パセドーシ病 2020年8月12日
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原因は喉にある甲状腺が腫れ、甲状腺
ホルモンが過剰に分泌されて、
体の新陳代謝が亢進することで起こる。
動悸と手の震え、汗が良く出て、食欲
がある割には体は痩せて行くという
症状がみられる。 眼がつきだした
ように見えるのも特徴だ。
心との関連でいくと、情緒が不安定
でいらいらして落ち着かない、活動的で
良く話すが神経過敏で興奮しやすい、
そのため、泣いたり怒ったり感情の
起伏がある。
甲状腺刺激ホルモンがどこから出て
いるかというと、脳下垂体からである。
脳下垂体は内分泌腺の総司令部とも
いわれ、その脳下垂体の上に位置する
間脳も、甲状腺の働きを調節している
という。
また、スピリチュアル的に言えば、脳下
垂体は瞑想をしたりする際に、最も
大切な脳の中の部分であり、この部位が
第三の眼にもつながっているという説
がある。
言い変えれば、脳下垂体にしろ、間脳に
しろ、双方とも、ヒトの情動を動かす
場所として重要なところであるということだ。
このことから、内分泌腺の病気は精神活動
ととても大きな関連があると、みられている。
心療内科を創設した池見酉次郎博士は、
真の原因はまだ、解明されていないと
しながらも次のように著書で書いている。
“パセドーシ病がなぜ起こるのかは、
今のところ明らかではありません。
しかし、遺伝などのほかに、精神的な
因子が病気の原因として関係している
のではないかと考えられています。
というのは、精神的なストレスを受けた
後にはパセドーシ病が起こることが
あるからです。”
(引用終わり)
次の例は博士が看た患者の場合である。
“たとえば、ある中年の婦人が娘の
結婚のために、準備万端整えて、
新居に嫁入り道具を納め、もう挙式
を待っていたところ、火事になって
嫁入り道具が全部焼けてしまいました。
それからしばらくして、この母親が
パセドーシ病になりました。
私どもは、このような例を‘びっくり
パセドオー’と呼んでいます。
びっくりしたためにバセドー氏病が
起こったというわけです。
パセドーシ病の人によく聞いて
みますと、85~90%の人が発病
の時に何らかの精神的なストレス
を受けていると思われます。
たとえば、火災、地震、海難事故、
などの生命を脅かすような危険な
事件、または、家族や職場での
心配や悲しみ、失意などの心の
痛手です。
しかし、人生にはストレスは
つきものであり、偶然の一致
に過ぎないという学者もいます。“
(引用終わり)
ここでは、池見博士はパセドーシ病
とストレスの関係を、取り上げて
いるが、実際、患者の経過観察を
していると、悪化したり再発する
ときに、ストレスが関与していると
以下のように博士はいう。
“実例をあげますと、30歳の女性
で26歳の頃、お産の後でパセドーシ
病が起こりました。
仕事嫌いの夫をもって、苦労して
いましたが、その夫が蒸発
したときに症状が悪くなりました。
その後、入院して軽快していました
ものの、退院後しばらくすると、
母親が病気したり内職で過労したり
して、また再発してしまいました。”
(引用終わり)
そこで、池見博士は従来のこの病の
一般的治療法のほかに、心身医学的
な治療を行い、効果が出た例をあげている。
“36歳の女性でかつてパセドーシ病の
ために手術したあと、10年たってから
再発しました。抗甲状腺剤の内服で
甲状腺の機能はほとんど正常に
なりましたが、イライラ感が強く、
動悸を訴えます。
よく聞いてみますと、再発の少し前
に離婚して、現在は姉の家で世話に
なっているとのことです。
また、姉の家は魚やで、朝が早く、
患者さんのこれまでの生活様式は
全く違うということがわかりました。
そこで、抗甲状腺剤を併用し、
患者さんの話をゆっくり聞いて
あげるようにしました。
また、ソーシャㇽワーカーがこの人
に住み込みのよい仕事をみつけて
あげたり、社会的、家庭的な環境
の調製がすすんだところ、心身共
に軽快していきました。”
(引用終わり)
このように、精神的に安定すること
がストレスの影響を最小限に食いとどめて
病状の軽減につながると博士は言う。
また、‘ゆっくり話をきいてあげる’
とか、ソーシャル・ワーカーの関与’
などが、患者の不安感や一人で
解決しなければならないという、
孤独感を解除して、寄り添って
くれる医師や協力者がいると認識
するだけでも、心の安定に大きく
影響を与えたのだと思う。
これまでさまざまな病に、ストレス
や不安感や恐怖などの感情が
与える影響が少なからず、
影響していることをみてきた。
さて、次回がこのシリーズの最後
となる。
糖尿病・肥満症について考えてみたい。
*引用箇所: ”ストレス健康法”
池見酉次郎著 昭和50年発行
潮文社
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