昨年末より
「どうするねーちゃん、来年じいさん(ワタシの祖父)の33回忌だってよ。なんかやらなきゃまずいかねえ」と、弟より相談されて
そうかあ もう祖父が亡くなってから32年もたつんだなあとしばし感慨にふけった。
そういえば祖父のお葬式にはまだ歩くか歩かないかくらいのムスコが居たと思う。
明治のオトコだったが、優しく穏やかな人だった。祖母のところに婿養子に入って会社を継いで実直にマジメに商売に励んで会社を大きくした人だった。
酒好きグルメで、日本画や骨董のコレクションが趣味だったところはしっかりワタシも影響を受けている。
「まあ形だけでもやっとくかねえ。」
これからそう遠くない将来 お寺には父母もお世話になるはずなのであまり菩提寺とのかかわりをいい加減にもできないとも思ったワタシの現実主義。
「じゃ、お経くらいあげてもらうか」と弟。実家のお墓(親戚の一族のお墓もここ)のある市の中心部にある寺は1400年代に起源があるという古刹は古刹である。
「あとさ、御塔婆も新しいのにしてもらおうよ。今立ってるのかなり古かったよね」とワタシ。
で、先週末、金曜日にゴルフをして、その帰り道、東京方面に帰る仲間たちと離れて、そのまま車で実家に戻ったのである。
両親の施設に行って、色々整理したり足りないというモノを母と買い出ししたり、
夜は同窓生仲間の飲み会に誘われて
地元にしてはおされな料理を堪能したりはした。
そして日曜
ぴっかぴかの寺の内部久しぶりに入った。
本堂までのエントランス階段は昇降機が備え付けられて、とにかく惜しげなくお金をかけた作りである。
100畳は優に超える本堂に案内されたのは ワタシと弟、たった二人・・・
四人がけの長椅子が横に10個 それが三列ほど並ぶ本堂に たった二人
「俺たちの若い頃の法事ってさ、家の親戚だけでここがいっぱいになったよなあ」と弟・・・
今回は忙しそうなオットにも、インフルエンザで回復したばかりの孫1のいるムスコ夫婦にも声をかけなかった。
両親も寒すぎて風邪をひかせたら困るので参列させなかった。
そう言えば祖父の納骨に来てくれた祖父の会社で働いていたじいさんはその時にひきこんだ風邪が原因で亡くなったという話もあった。
ここの坊さんのお経を聞いたのは何年ぶりだったろうか?
先代を継いだばかりの時は、頼りなさそうでまるでこちらを向いて話もできなかったヒトだった覚えがあるが、さすがに年を重ねて朗朗としたお経が読めるヒトになっていた(上から目線)
いつもの般若心経から始まり、御焼香の間のお経も結構長く読んでくれた(二人だとあっというまに終わってしまったので手持無沙汰だった)
御塔婆をホイっと渡されて二人で墓地に収めに行く。
めちゃめちゃ寒い日で特有の北風が吹きつけて、お線香つけるのも困難であった。
御塔婆は新しくなって気になっていたことは解決
「これも回忌の値段(54000円也)に入ってるの?」とワタシが聞くと
「別なんだよ 御塔婆だけで9000円!」と弟
「げげ、たけー いい商売だよねえ。お経もさ、読んでたの30分だよね」
「ホントだよ。時給10万だぜ 」
「端数の4000円ってのは消費税かあ 収めるのかいな 宗教法人ってさ」
「もうこれで打ち止めでいいよなあ」
「いいよぉ 切りないからさ。ワタシだって死んだあとにやって欲しいとも思わないもん お寺が儲かるだけじゃん、十分十分」
「じいさんの戒名もさ、院号入ってるから高かったよなあ 100万超えとか言ってた覚えある」
「やっぱ院号ってつけてもらわなきゃだめなんかねえ 私テキトウにつけようか 家の両親のは」
「御塔婆も東急ハンズかなんかで木買って削ってもらえばできるよなあ」
「たいして上手な字でもないもんね あたしでも書けるよこのくらい・・」
とあくまでも不謹慎な姉弟の会話であった。
それにしてもぽつんと姉弟二人の回忌を経験して、改めて実家の系統は途絶えるってことを感じた。
弟は子供が居ないし、ワタシは嫁に出ちゃっているし。
元々祖父母には子供が居なかったので、それぞれの甥と姪を養子にしたというちょっと複雑な家系であり、父の兄妹は多かったがその後は多産系でなく、母のところも同じく、それも殆どが進学で東京に出て、そのまま就職したり嫁にいったりして故郷に居る方が少なく、たくさんいた親戚の家も殆ど市内に無くなってしまっている。
日本の少子化、地方の衰退をまざまざと感じさせる我が一族ってのを改めて認識させられてしまった。
まあ この子たちはいるから。家はたえてもDNAは受け継がれたわけだよなあ。と思うことにする。
墓参りが終わって東京に戻る前に両親のところに行って報告したら
「ご苦労様 今日は暖かくてよかったねえ」と母
ぬくぬくとした鉄筋の立派な施設では、この地方の風の寒さも感じずにいられる。
そうやって両親が守られてるってことは安心。金はかかるが、この方法しかないという現実。
故郷は懐かしく温かい記憶もたくさんあるけど、この先を考えると良い事ばかりじゃなくてわずらわしい整理ごとが増える予感。
ため息つきつつ高速飛ばした帰り道。