ボッチ時間が長かったお正月期間、たくさん本が読めました。
まず「昭和の犬」
姫野さんの作品は飄々としたユーモアと粘着質でない毒が仕込んであって、ワタシにとってとても面白く読める作品であります。
ただ、この人が自分の少女時代を描いたものは読んでいて胸が苦しくなる。
両親との関係を直視できない・・・ と言うか 本当にかわいそうすぎるから。
いわゆる「毒親」なんですね。著書の中には 謎の毒親 という作品もあるくらいである。
何気ない一言に浴びせられた罵倒、身に覚えのない行為への叱責、愛情のかけらもない無視、意味不明の身体接触。少女の頃から家庭で受けつづけた謎の仕打ち
昭和の犬 という作品は、彼女の記憶が始まった幼少時から 50代くらいまでの親御さんとの関係も描かれているから当然その辺の親との関係のことも書いてある。
この本を読んでいるとムスメの子供である孫Ⅲつい比較してしまう。
ムスメに抱かれ話しかけられたり何かを食べさせてもらったり、ムコと遊び、近所の人やみ知らぬ大人たちとに笑顔をもらって 大半が楽しそうに笑っている写真と動画 誰からもかわいがられることを信じて手を差し伸べる無邪気な笑顔。
いつまでもそんなことが続くわけじゃないが、親が庇護してあげられるうちはその笑顔がキープできるようであってほしいじゃないか。
なぜ筆者は 父が壊れる(切れて怒鳴りまくる)ことをいつだって恐れ、母からは人格すべてを否定されることを言われ続けなければならなかったのだろうか
感受性にあふれて当然賢かったであろうし、スラッとした体型と彫りの深い容貌は、お洒落すれば大変な美人と思うのだけど、何故か自己評価が低そうにうかがわれる。
幼少時の彼女のために憤ってしまうワタシである。
物語は同時代に生きてきたワタシとしては要所要所の共通の記憶があって興味深かったし、時に自虐的なユーモアにあふれて笑える部分もあるんだけど、読後があまり後味がよろしくなかった。これ、直木賞の作品でしたよね。
そして「近所の犬」
これは時には幼少時の話も入るが、筆者が主に両親から独立してからの(定期的に介護はされていたらしいが)話なので、昭和の犬よりは苦しくならない。
自分じゃ飼えない環境なので、近所の家の飼い犬をみて楽しむ「借飼」を書いた本。
自分は犬は好きだが犬からは好かれない、さらに人見知りである。と言っておきながら、案外飼い主さんに声をかけたり、メールアドレスまで交換して、その犬が近所を通るとなると連絡してもらって飛び出していく・・・ そこまで犬好きがなせる業らしい。
ワタシが読みながら悶絶するほど笑ったエピソードは、黒ラブのラニと飼い主の爺さんの話。
ぶっきらぼうで、愛想のない爺さんなんだけど、明大卒でエロ本を出していた元出版社経営という過去を持ち、進駐軍の仕事もしていたころ、外人からアメリカに来ねえか?と誘われた時の話。
「よっぽど行こうかなと思ったさね。若いじぶんだったからね」
「行ってみればよかったのに」
「そうだな。行って見りゃよかったな。あのときアメリカに行ってたら・・・」
このあとにつづけたフレーズがふるっている。
「・・・今じゃ立派なグランドファーザーよ」
おかしくありませんか? このせりふを歌舞伎役者が寄り目をつくって見得を切るふうに言ったんだって。
想像するとおかしすぎる・・・
ワタシも先代犬Pちゃん、今犬のGちゃんと合わせると、かれこれ20年以上も家の周りを散歩しているから、いわゆる犬知り合いってのもいるわけです。
あんまり距離を縮めるとご近所なだけにめんどくさいから立ち話の輪とかにはあまり長居しないようにしてはいるけど、どうしても犬同士が相性があったりで、親しくなったり、飼い主さんが印象深かったりする人もいる。
その中のSさん。多分70代後半のお爺ちゃん。だいたい奥様と半々くらいで散歩されていて、奥様とはたまにランチなどする、犬知り合いの中では親しい方なんだけど。
その爺さんが、すこぶるカッコいいのである。姿勢もよく、半分白い髪もふさふさ。そしてそのファッションがすごい。
白いシャツにデニム、そのシャツの袖のめくりかたのさりげないけどちょうどいい分量。そうかと思うと、迷彩コートにカーゴパンツなんかもさらっと着こなした姿も艶なり。また、たまにまだお仕事もしているらしく、そのお出かけの時の端正なファッション。多分マッキントッシュのゴム引きコートに茶色のズボン。それに辛子色のシャツなんてのぞかせちゃって、それがものすごく似合うのだ。
とにかくどんなジャンルでもハズレがないのである。
会うのが楽しみの飼い主さんの一人。
奥様の方とお話するようになって「ご主人さま、ホントにおしゃれですね~」とほめたら
「まあね、それが仕事だからね」とおっしゃる。よくよく聞いたら、誰もが知ってるメンズブランドの創立メンバーの人だった。wikiにも載ってたよでビックリ。
最近ユニクロからワークマンにシフトしつつあるオットに「あ~たも 〇〇さん見習ってたまにはおしゃれしたらどうなの?」とハッパをかけたが、「へ~~~ん」というやる気なさ。ただ、出自を教えたら「なるほどな~ さすがだな~」とそのセンスには敬意を払っている様子である。
あと、最近会って良かったな~ と思える犬は、2年ぶりくらいで会った我が愛犬と同じ種類の子である。
二年前まで何度か会って、そちらのワンコと飼い主さんがうちの子をとても気に入ってくれて、会うといつも「可愛い顔してますね~」とべた褒めしてくれていたのだが、最後に会った時に、その子が後ろ半身に補助車つけていたこと。
驚いたワタシに「ヘルニアになって歩けなくなっちゃってね。一時は大変だったんだよ。この車をつけて歩けるようになってまだ助かったんだよね」と飼い主さん。40代半ばくらいで、髪の毛を後ろで一本に結んでいる、自由業っぽいおだやかなお兄さんおじさん。
「ダックスはヘルニアになりやすいんだよね・・・オタクも気を付けてね」とその時に言われた。
それからしばらく会えなかったのだが、年末にちょっと離れたところまで散歩したらばったり会ったのである。
向こうも覚えていてくれたと見えて「ああ Gちゃんでしたね。相変わらず可愛いなあ」 あっちの犬も嬉しそうに車をひきずってGちゃんにすりすりしてくる。
「名前まで憶えていてくれたんですね、あれ?こちらのワンちゃんのお名前なんだっけ?」人と犬の名前をすぐに忘れるワタシ
「ジョ〇ンニです」
「あ~ 銀河鉄道でしたね」
「そうそう、そちらは大天使さんでしたね」
という会話がなされたのである。
ジョバ◯ニが元気に生きてて、大事にケアされてるのがわかって嬉しかったよ。