トロルお爺の”Satoyaman”林住記

生物生産緑地にて里山栗栄太が記す尻まくりワールド戯作帳

**二度童にすなるといふ回想といふものを孤爺もしてみむとてするなり

2023-03-08 | 今はうたかた
           駅官舎転校しちゃったのりちゃんは
                 修学旅行のホームに母と

           みっちゃんを通せんぼした雪の路
                 悪ガキ仲間は黄泉路の遠く

           新担任すでに膨らむあの子にも
                 乾布摩擦の酷き一斉

           祖母の筋同級生のたけちゃんと
                 話す事なく視線合うだけ

           鮨詰めや背中合わせの時ありて
                 温みいまだに通学列車

           新学期トニオに行こう声幾度
                 吾はカツカツ両者哀しき

           惑い道われは生まれた生きて来た
                 絽の糸筋の阿弥陀くじいく

           淡き春干潟を満たしまた干潟
                 潮路の如き干満の中

**二度童にすなるといふ回想といふものを孤爺もしてみむとてするなり

2023-02-16 | 今はうたかた
           クラス写真の 素朴な少女
           今は媼に 同じ歳         はあこりゃこりゃ

           坊主頭に おかっぱおさげ
           笑む子もいない セピア色    はあこりゃこりゃ

           好いた子なのに 邪険にしたん
           転校生の ただ一枚        はあこりゃこりゃ

           一人二人と 悪ガキ仲間
           かくれんぼして 吾が鬼      はあこりゃこりゃ

           この世の朝から はや昼去りて
           黄昏きたる しのびあし      はあこりゃこりゃ

           数を数えりゃ 三十四も
           今は何人 残りおる        はあこりゃこりゃ

           こけしの付いた 鉛筆見せた
           マーちゃん欲しいと 手に触れた はあこりゃこりゃ

           はないちもんめ 裏腹ばかり
           気の無い素振り この子には    はあこりゃこりゃ         
           
           

*三兄新盆

2019-08-13 | 今はうたかた
              独り発つ幾夜孤独の星月夜

              神隠し顔見るもなく荼毘に出る

              夏還る草場に薄き露の跡

              還りたる土ともどもと草いきれ

              樹木慕へ祝詞お神酒で参る夏

              好みなり甘酒一本盆供え

              同胞も遠く老いては風の盆

**老々葬送

2019-01-18 | 今はうたかた
         同胞も離れ離れで歳老いて葬儀の席も生きて欠けたり

         認知症耳遠ければ弟の死も届かぬ長姉ありのまま生く

         心せど農夫症で歩けぬ身長兄拝す電話の向こう

         母浴びた産湯の沢に溶ける灰わけた御魂に安らぎ願う

         塵となり地に還りゆく三兄をいとおしむかな指の先々

         同胞の葬儀に揃わぬ歳なれば先は寂しき事ばかりなり

*玄冬夢

2019-01-16 | 今はうたかた
              病葉とならず一葉兄は散る

              冠雪の三尊兄を来迎す

              風花の吹雪に遺灰里の塵

              故郷の新雪に消ゆ遺灰かな

              冥土にて初々春や兄の今

              冬ざるる能舞のごとき散骨葬

              同胞とまみえるも無き虚無へ立つ

              世を終い悠久に生く寒の入り

              三兄は黄泉路細道行者道

              地に還る遺灰星霜八十年

クワの実と言えばみっちゃん…

2018-05-15 | 今はうたかた
 「それにつけてもおやつは桑の実」なのだった。今年も桑の実が熟し始めた。当初の頃のようなジャムやジュースに加工する事はしなくなったけれど口には時間を費やして放り込むのが日課である。

 少年期、まだ養蚕が行われていたから桑畑も続いていた。この畑にアルマイトの弁当箱を持って桑の実採集に出かけたものである。指も口も紫色に染めて頬張ったものだ。他におやつなど無い時代だから無理も無かったけれど、桑の実が稔ると同級生のみっちゃんを思い出す。
 隣の駐在所の四女で末っ子、一緒に桑の実取りに行った付近が火葬場近くだった事もあり、自宅に持ち帰った桑の実は全て捨てられたと言っていた記憶は今でも鮮明だが、転校していった時期の記憶は全く無い。

 よく知られた歌に「みっちゃん道々ウンコたれて…」という歌があるが、この歌を歌った記憶もないけれど、桑の実を食べる間は「ウンコ真っ黒け」になるものの、まあ、あのビスケットには負ける…。

**初恋の頃…

2018-02-27 | 今はうたかた
転校の子よ堅香子の花に似て何故堅香子か知らざる我は

こけし付く鉛筆取り来て触れし手の記憶まだある小1の冬

暗き顔卒業写真に残りおるその後の便り還暦の会

夏の夕母と上がりし我が家で会話などなし同級生と

集合の出会い頭に笑み見せたたった一つの堅香子の花

姥捨ての山も緩みておぼろ萌え帰り来ぬ日々幼子に観る


**里は大雪、思い出す38豪雪

2018-01-08 | 今はうたかた
掘りだせば牢獄格子雪囲い埋もれ見えなき我が家の形

屋根の雪六尺ほどを掘りとれば家はきしみつ戸はまた滑る

大屋根に立てば広がる大雪原除雪機関車墨絵の如し

校庭の三尋の雪へダイブした今のダイブは哀れなりける

家を掘る雪壁屋根より高きなり通りの電線跨いで通る

十日ぶり救援機関車黒煙と除雪雪煙美しかりけり

豪雪地十日の孤立も意にもせぬ父祖より続く冬ごもり

朝まだき玄関先に滑り落つ新聞配達さぞ痛かろう

*望郷

2017-08-21 | 今はうたかた
           雪形を脱いで蒼増す越後駒

           越後駒眠る山見つ父の野辺

           八海も前山粧い朽つ社

           滴るや中岳かいま関越道

           八海の八つ嶺は無理歩けない

           三山は雷雲かぶる郷は虹

           三山や金床雲に御背光

**動悸の桜子

2017-02-04 | 今はうたかた
 学友の他界を知りて寂々と一期の人は蘇りける

 耳元で袋の音を聞き歩く我見て笑みし見染め初めは

 下校路で夜勤の我とすれ違う動悸高鳴るわれ田舎者

 父と住む娘であれば籠を持ちビーチサンダルぱたぱたと行く

 写真得て進学したき我なれど秘めて転居の我二十歳なり

 うつむいてすれ違う日々青春を訪ねし時に家すでに無く

**故郷は遠くにありて想うもの

2016-10-31 | 今はうたかた
八海山八つ峰(を)の白き朝なれば手を擦り仰ぐイスラムの蒼

はたけ草抜き続け行く兄の背に塩の地図浮く陸稲の中に

ムクドリの喧騒の巣懐かしき明治のボロ家代かわり消ゆ

八色原アケビやキノコ追い攻めつ秋グミ摘まむ原は街なり

魚野川流れは永久に変わらずも釣りし場所なく追いし野もなし

訪ぬればその小さきにただ立てりヤンマ蟹獲る社の沢は

堅香子の花の斜面は語り草わがふさ髪も永久に在らざり

同級生爺婆となり皺顔は郷里で活きた赤銅メダル

**同級生N君

2015-11-18 | 今はうたかた
  神無月クラス会あるこの週に夫人よりあり賀状欠礼

  覚悟して毅然と逝きし知りおれば我に出来るかかの生き様を

  来迎を自宅で待ちし双月のひと日ひと日の夜偲ばれる

  佐渡旅行後部座席の二日間古希には逢おう今はまぼろし

  窓を過ぐ別れ出来なき友の居たこの地に降りた事無し我は

*ここに幸あり

2015-01-04 | 今はうたかた
      調理場の幸一口の笑顔なり
      出し口に食堂の顔秋の幸
      新米の香りに思う去年今年
      誘導を終えて一口夜の白湯
      資料読む学成り難し四十路の路

*遠い夏の日

2014-07-28 | 今はうたかた

            ガリガリとかじらぬアイス遠き夏

            そう言えばヒョウタンアイスあったっけ

            縁日のアイス十円握りしめ

            サッカリンズルチン食紅これアイス

            初めての牛乳アイスあの至福

            冷凍機唸る店先アイス買う


*牛も家族だった

2014-07-17 | 今はうたかた

          牛冷やす脇でシジミを掘りにけり

          牛洗う腿の糞玉川流れ

          鼻取りの我も付き合う牛冷やし

          牛洗い父は泥服月の道

          頭を上げて洗わる牛は戻し噛み