あしひきの山川の瀬増し寄せば命みな絶ゆ砂礫河床に
あしひきの山川の瀬の響るなへに弓月が岳に雲立ち渡る 柿本人麻呂
沢走る濁流により礫積もり災の河原となりにけるかも
石ばしる垂水の上のさわらひの萌え出づる春になりにけるかも 志賀皇子
ヤゴのため軍田の沢に水を得む十号台風砂礫に変えたり
君がため山田の沢にゑぐ採むと雪消の水に裳の裾濡れぬ 作者未詳
秋なのに猛暑居座り鳴く蝉に肝は凍れる胸中泣ける
雪のうちに春は来にけり鶯の凍れる涙今やとくらむ 藤原高子
沢の色は移りにけりな奔流に諸行無常と手当せし間に
花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に 小野小町